撮影が終わったのは明け方の4時。
そのあと大野さん家に直行し…
俺達はお互いの中にお互いを刻みつけた。
何度も何度も。
夜にはまた撮影がある。
なのに、眠ることもなく…
ヤりたてホヤホヤのカップルみたいに。
ひたすらずっと…
お互いの身体を貪った。
呼吸と欲がやっと落ち着いたタイミングで時計を見る。
結局一睡もしないまま…
現場に向かう時間が近づいていた。
俺は居心地の良すぎる大野さんの胸の中から抜け出て…
ゆっくりと身体を起こした。
んだけど…
不意に手首を掴まれ…
また大野さんの胸に、逆戻りした。
和「…なにすんのよ」
「びっくりすんじゃない」
抗議にもならない抗議。
言葉とは裏腹に、胸に擦り寄る。
そんな俺の背中を、優しくなぞりながら…
大野さんは、言った。
智「なぁ…」
和「…なによ」
智「今度の誕生日辺り…」
「休み、とれねぇ?」
和「…え?」
突然の提案に、頭がついていかない。
俺は何度も瞬きしてから…
再度、聞き返した。
和「…え、誰の?」
智「おまえに決まってんだろ」
和「…俺?」
智「…当たり前だろ」
「他に誰がいるんだよ」
「俺の誕生日、昨日終わったし」
…確かにそうだ。
そうだけど…
主語、抜けすぎじゃない?
智「…なぁ」
「行きてーとこ、あるからさ…」
「とれよ、休み」
いままであんまり…
こんな風に誘われた記憶がなくて。
どんな顔して言ってんのか…
ちょっとだけ気になって
俺は思わず顔をあげた。
見つめ合う。
強い言葉とは裏腹に…
お祭りで買う綿あめみたいな、甘い、幸せ色した視線。
そんな…
見慣れない視線に、一気に胸が高鳴った。
…いや、違う。
見慣れないんじゃない。
かつて何度も何度も…
自分に注がれた視線。
ただ甘すぎて…
恥ずかしくて。
いつも直視できないだけ。