大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。








「タイムカメラ」




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side  n




携帯に映ったのは、待ち望んだ通知ではなく。


1日の終わりから…
1日の始まりを告げる0が並んだ数字。



和「…なんなのよ…」



思わず呟く。



和「おわっちゃったじゃん…」

「俺の誕生日…」



無常にも…
俺の携帯は、俺の誕生日を通り過ぎていった。







…確かに俺も悪かった。


あれこれ言い逃れをして…
ちゃんと返事をしなかった。


珍しくあの人が誘ってくれたのに…

「無理だ」と決めつけて、そうするための道すら探そうとしなかった。




だって…

大野さんがあんな風に…
俺を誘ってくれたのが。


なんだか妙にくすぐったくて。


密かに喜んじゃってる自分も、妙に恥ずかしくて…



どうしても、あの時は…

素直に「うん」って、言えなかったんだ…












去年のあの人の誕生日。


俺は撮影があって、どーにもこーにも会いに行けそうになかった。


だからあんな…
あんなイレギュラーなおめでとうを送ったんだ。

なんとかして俺をあの人の中に残したかったから。



…いつもならね?
あの人の肌に、直接俺を残す。

まぁ、誕生日じゃなくても残すけど…

誕生日は特に、強く強く俺を残す。



物理的にそれができないのならせめて…

あの日の最後を俺にして…

心に。

あの人の心の「特別枠」に、俺を残したかったんだ。




それはあの人のためじゃない。
俺のため。



俺が、勝手に…
大野さんの「特別枠」に入ってる…って。

優越感に浸りたいだけ。

そして、安定したいだけ。



わかってる。
全て自己満足。

それくらい俺は…
あの人に嵌ってるんだ。






でも俺のくだらない自己満足は…
意外にも大野さんにも刺さったようで。


誕生日が終わってすぐ…

大野さんから

「何時になってもいいから来い」

ってLINEが届いた。