大宮BL小説です。
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先にこちらをお読みください♡










和也 26




久しぶりにサトと交わった夜から数日後…


宮中は客人の来訪に…
いつも以上に華やいでいた。



「これはこれはようこそ!」



父上の上機嫌な大声に、胃液が上がってきそうになるのを…

山程サンザシの入った袋をこっそり握ることで耐える。



隣国の国王は…
でっぷりとした顔をくしゃくしゃにして、父上と握手をした。



楽しそうに談笑する二人の後ろに…
ぼんやりと佇む女性が見える。


サンタクロースみたいな体格をした国王の、半分くらいしかない、スリムなこの女性こそ。

僕の将来の伴侶となるであろう、ナナ王女だった。



僕らは親同士のつながりから…
生まれた時からお互いが結婚相手であることを決められていたらしいが。

僕はそれ自体「父上の戯言」だと、ずっとどこかで思っていた。




なぜならかつて、生まれたばかりの彼女を抱いた父上が、幼い僕に

「ほら、おまえの将来の伴侶だぞ?」

と、言ったことがあった。


僕はまだ小さくて。
伴侶の意味などわからず。
不思議な気持ちでその赤ちゃんを覗いたのだが…


そのあと続いた母上の声も、はっきりと覚えている。

「カズナリやこの子の将来を、大人が勝手に決めてはいけません」




本当にそう。
母上の言う通りだ。



でも父上は今…
母上のその言葉を、完全に忘れてしまっていた。





和「…久しぶり」


ナナに声をかける。


彼女はチラッと僕を見たあと…


ナナ「…お久しぶりです…」


と、消え入りそうな声で言った。




僕らはそれ以上…
言葉を交わすことがなかった。




わーわーとうるさい父達には…
僕らのこの距離が見えているのだろうか。



別に…
ナナ王女のことが嫌いな訳ではないが。
でも、好きでもない。


無防備に身体も心も曝け出せる相手でないことは、確かだった。



僕は…
緊張からか顔色のない…
これでもかと飾り付けられた美しい女性を前に…


はっきりと「この人ではない」ことを悟った。






じゃあ…
誰?


僕は…
誰に全てを曝け出して…
誰と生涯を共にしたいのだろうか…



一人の人物の顔が、一瞬浮かぶ。


その発想に…
何言ってんの…と、自らツッコむ。


それは、身体だけ。
きっと、違う。


僕は身体しか人と繋がったことがないから…
勘違いしてるだけ。


僕はサトを思い浮かべた自分にそう、言いきかせた。









それから数日後。
その夜はとても静かだった。



父上が外遊に出られたこともあるが…

なんだかいつもより、宮中の使用人達が少ないように感じる。


それをフーマに尋ねると…



フーマ「国王様がご不在ゆえ、使用人達もお暇をいただいている者がたくさんおります」

「ご安心ください、警備体制は万全です」

「それに…」



和「…それに?」



フーマ「あの者が、参りますゆえ」
「…安全です」



含みを持たせた言い方に…
待つ自分を悟られたような気がして。


僕はとぼけて「あの者って誰だよ」
なんて、不貞腐れた。




コンコン…と、静かなノック音が、部屋に響く。



フーマ「…噂をすれば、でございます」
「…カズナリ様は、しばしお待ちを」



そう言って…
フーマは風のように消えた。







*次回は本日18時
蓮さん家(智サイド)
です!