大宮BL小説です。
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和也 16
頬を滑る、冷えた指に…
意識がほんの少し、戻って…
でも開けられない瞼のまま、その指の動きだけを追う。
温もりのない…
でも優しい指先は…
結局僕の命を奪わなかった。
「却下だ」
サトは…
僕が雇った殺し屋は、そう言った。
殺さない、優しさ。
残酷な……優しさ。
そんな優しさはいらない。
今すぐ僕を殺してくれ。
そんな風に…
声をあげてぶつけてしまいたい気持ちもある。
でも…
さっきまで、自分がいた世界。
激しく、燃えるように…
苦しみの果ての衝撃だけを追い求める。
そこは…
地位も名誉も…
今僕のいる位置も、失った感情も。
なにもかも、一切関係なく…
圧倒的な力で僕を押さえ込んだ。
全く知らなかった世界。
ここでなら…
何も考えずに…
僕は、僕で、いられるのだろうか…
そんな夢みたいなことを考えながら…
僕は、意識を手放した。
ふと、意識がもどる。
うっすらと…
窓の外は明るくなっていた。
シーツに…
嗅いだことのない匂いが残っている。
甘い…
どうしようもなく、甘ったるい匂い。
くん…と息を吸い込むと、ずくん…と僕の中が戦慄く。
さっき身体に放たれた毒虫の余韻。
そのあと打たれた楔の存在感。
どちらもそう簡単には消えそうになかった。
ゆっくりと身体を起こす。
ギシ、ギシ、と…
ベッドと同じ音を、身体のあちこちが立てた。
あらゆるところに捕まりながら…
なんとか浴室にたどり着く。
キュ…とシャワーのコックを捻った。
和「んっ…」
肌にあたる…
シャワーの粒、一つ一つが。
疼く身体に突き刺さる。
その刺激から逃れたくて。
ぎゅっと自分の身体を抱いて…
はぁ…と熱いため息を、吐いた。
なんとか身体を洗って、浴室を出たが…
肌にあたるシャワーだけでなく…
身体を洗う自分の掌の感触ですら、たまらなくて。
熱を帯びた身体を、そっとベッドに横たえた。
ゾク、ゾク、と震える身体。
白い肌に鳥肌が立っている。
ただ身体を洗っただけなのに…
どうしようもなく、疼く身体に…
気づくと僕の左手は、中心に伸びていた。
*次回は明日12時
またあおたん家です!