大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
「…渡したら、なに?」
絡んだ視線。
胸が高鳴る。
そんな俺の心臓を、一蹴するかのように。
大野はフッと、息を吐いた。
「直して嵌めるだろうから」
「…あんま役には、たたねぇだろうけどな…」
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あの日の大野の…
笑った顔が蘇る。
大野が買った、パズルリング。
それは決して…
俺のだって決まったわけじゃ、ないんだけど。
でも…
どんなものか。
一目見てみたかった。
俺は、大野に紹介したというパズルリングの店を教えてもらい、その店を訪れた。
指のサイズもわかんないし。
どれがいいのかもよくわかんない。
でも、そのどれもが…
短い時間だったけど、何度も何度も交わった、俺達の身体と心のようで。
幾重にも絡み合う、リング達。
一つ一つは細いけど…
重なることで、太くなるリング。
俺はその一つ…
日に焼けた、細く美しい大野の指に…
似合いそうなリングを手にして。
俺は、大野の故郷の国から…
自分の生まれた国へと、戻った。
大野がいそうなところを、手当たり次第に探す。
自惚れかもだけど…
大野は俺を、探しているかもしれない。
そう思って…
軍の施設の周辺を、何日も何日もかけて…
俺は探して歩いた。
パン屋にいると思ったから…
パン屋は一番に巡った。
でも…
どこにも大野の姿はなかった。
やっぱり…
俺の単なる自惚れだったのかもしれない。
そう思って…
心が折れかけたある日。
たまたま、小さな子どもが持つカレーパンに、目を奪われた。
「いつも焦げてるの」
「でも安いし美味しいんだよ?」
少女に連れてきてもらったカレーパン屋は…
路地裏の奥。
そのまた奥の、端の端。
誰も気づかないような…
小さな小さな店だった。
ショーケースのみの…
しかもそのショーケースには、カレーパンしかない店。
いいきつね色のものは、ホントに少し。
大体微妙に黒いものばっか。
売り上げを伸ばす気が感じられないその店の奥。
そこには…
ジッと鍋を見つめる…
懐かしい眼差しが、あった。