大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。

























「…え、なんですか?」



「カフェ・クバーノ」
「キューバのコーヒーの中で一番ポピュラーな飲み方で…」

「エスプレッソに砂糖をたくさん入れるんだそうだ」



「…エスプレッソでもなんでもないですけど」



「いちいちうるせーぞ」
「とにかくやっぱ食後はカフェクバーノだな」




言い切った大野さんの横顔に苦笑う。


そんな僕に…
大野さんは、言った。



「てか…」


「…淹れてくんねぇ?」






夜風に…

大野さんの言葉が、乗って。


僕の耳に、届く。



ドキン、と…
胸が鳴る。




え…


淹れるって…
コーヒー、を?


僕が…
今から?




「俺ん家、すぐそこだからさ」


「…寄ってけよ」




甘い匂いと、甘い声。




「…おまえのコーヒー」


「飲みてぇからさ…」




僕の心臓がドキドキと…
夜に溶けていく。





お、落ち着け…


大野部長は男で、僕ももちろん男。



そんな、まるで…

恋に発展しそうな、微妙な距離の男と女が…


部屋に誘った・誘われた、みたいに。



なんでドキドキするんだよ…







「…なに?」
「意識してんのか?」



小さな沈黙を、茶化すように破った大野さん。


痛いとこ突かれた僕は…



「べっ!別にっ!」

「するわけないでしょ!?」


「…い、いいですよ!」
「しょーがないから、淹れてあげますっ!」



なんて…

不自然なほどに叫んだ。







結局…


大野さんの、シンプルというか…
なんもない部屋にお邪魔した僕は。


インスタントコーヒーでカフェクバーノもどきを淹れ…


あたふたと自分のブラックコーヒーを飲んだ後、早々に退散した。




てか…

出てきたお茶請けがすごすぎた。



色とりどりの…
ぷるん…とした丸い玉が、お皿に並んでて。



腹いっぱいだったのに、その見た目の可愛さに…
思わず一つを口に入れてしまった。



想像を絶する甘さ。



なに、これ…



「美味いだろ、あんこ玉」



あんこ、玉…



「わざわざ取り寄せしてんだよ」



そう言って…

パク、パク、と…
口に入れていく大野さんに。



つくづく…
甘党魔神を舐めてた自分の浅はかさを悔いた。