大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
一瞬言いかけて息を飲んだ僕に気づいた大野さんは…
「…なんだよ」
「今更遠慮すんなよ」
と言った。
別に遠慮してるわけでは、ないんだけど…
考え込む僕に、
「え、そんな馬鹿高いもんなんかよ?」
って目を見開いたから…
「あ、いや、そ、そんな…」
「馬鹿、高くは、ない、と、思う、けど…」
切れ切れに答える。
「…まぁ僕にとったら高級品ですけどね…」
「…もったいぶんなよ」
「いいから言え」
大野さんが…
額の汗をグッと拭って、言ったから。
僕は、正直に答えた。
「らー、めん、です」
「…」
「…」
「…え、ラーメン?」
「…はい」
大野さんの足が止まる。
それに併せて僕も立ち止まった。
「ラーメンって…」
「フカヒレやらツバメの巣やら入ったやつ、ではなくて?」
「もちろんです」
「中村屋のラーメン、食べたいんです」
僕は…
会社近くの人気の中華屋さんの名前を、言った。
「あそこのラーメン、すんごく美味しいですよね?」
「僕、大好きなんですけど…」
「でもカップ麺と比べると…」
「4倍ですからね、値段」
「なかなか行く勇気がなくて…」
僕の話を黙って聞いていた大野さんは…
じっと僕の顔を、覗き込んだ。
「…おまえさ」
「…はい?」
「…借金でもあんの?」
「…は?」
「それか、誰か囲ってる?」
「…意味わかんないんですけど」
「ま、いいか…」
「ホントにラーメンでいいんだな?」
「はい、ラーメンがいいんです♪」
「…安上がりなヤツだな」
そう言って歩き出した大野さんに、慌てて追いついた僕は…
「いや、これ一回ポッキリじゃないですから」
と、笑いながら言った。
「え?」
「次は何にしよっかなー」
鼻歌混じりに…
スキップしながら歩く。
そんな僕に、大野さんは…
「…ホントおまえって…」
「…面白れぇやつだな」
と、また言った。