大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
ことの発端は、僕が営業部に配属されてすぐのことだった。
出入りの業者から、営業部の喫煙フロアにある自販機のラインナップに関する相談があった。
それは…
コーヒーやジュース、紅茶や緑茶といった、いかにも定番な自販機ラインナップ中で…
明らかに異彩を放つお汁粉。
これをなくしたい…というものだった。
「前任の宇都宮さんに何回お聞きしても、無くさないでの一点張りだったんですけどね?」
「退職されたと聞きましたし…」
「もう外してもいいんじゃないかと思って…」
なるほど…
僕は何も考えないままに…
「あ、いいんじゃないですか?」といいかけた。
が…
「冷たいものでもいいから置いて欲しいだなんて」
「宇都宮さん、よっぽどお好きだったんですね」
そのひとことでハッとする。
前任の宇都宮さんは、営業部の庶務一筋40年の大ベテランで。
僕も新人の時大変お世話になった。
今年の3月に定年を迎えられて…
惜しまれつつ退職されたのだけど…
宇都宮さんは、夏でも冬でも…
冷たいものは飲まないはずだ。
“冷たいものは身体を冷やすんだから”
“にのちゃんもあんまりガバガバ飲んじゃだめよ?!”
確か僕に何度もそう言ってたことを思い出す。
ほんの少し感じた違和感に…
僕は思わず聞いた。
「てかズバリ、お汁粉ってどれくらい売れてます?」
すると…
サービスマンは「なんでそんなこと聞くんだ?」とばかりに目を白黒させて言った。
「そうですね…」
「だいたい月7〜8本くらいかな…」
「てか今月も?」
「先月も?」
「変わらずずっとですか?」
僕の勢いに…
ちょっと後退り気味になりつつも。
その若い青年は頷いた。
「はい」
「基本いつもずっとそれくらいをキープしてますねー」
この答えに…
お汁粉購入者が宇都宮さんではない事を確信する。
だって…
宇都宮さんは2ヶ月前にはもう退職してるもの…
「…で、いいですよね?」
「撤収ってことで」
サービスマンは、お汁粉の缶を全て出そうとばかりにスタンバッてたけど。
僕は言った。
「あ、いや…」
「やっぱり、とりあえずはこのままで」
「…ほら、このお汁粉でがんばれてる社員も、多分いると思うんで」
少し納得がいかないような顔をしたサービスマンに僕は「お願いします」と頭を下げた。