大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。






新しいお話、始まりまーす♡


















「カフェ・クバーノ」



side n





「…てかよく飲めますよね」



その漆黒からは想像もできないような…
シロップみたいな液体を。

それはそれは美味しそうに飲む、目の前の人。



お盆を持ったままつぶやいた、僕の独り言に…
上目遣いの視線が刺さる。


“余計なことをいうなよ”


そう言わんばかりの瞳は…
カップから口をつけたまま、俺を睨んでいる。




「…そんな苦いの」


つい漏れた本音を帳消しにする絶妙なフォロー発言に…

大野部長は満足したのか。


フッ…と口の端を上げたのが…
カップの端から見えた。








大野部長は…

35歳という若さで異例の部長職への昇進を果たした、とんでもない敏腕営業マン。

頭はいいけどクセの強い連中ばかりが集まる営業部を、圧倒的な能力と統率力で引っ張る…

いわば営業部の顔のような人物だ。




別の課の庶務だった僕が…
営業部の庶務に移動になって早半年。

まだまだ新参者の僕でも大野部長の凄さがわかるほどに、大野部長は圧倒的で…

難しい案件を提示するややこしい取引先も…
忙しさのあまりに部下が侵したとんでもないミスも…

最終的にはうまく味方につけて、当初の目標額以上の売り上げをあげてしまう。


ピンチをチャンスどころか…
大チャンスに変える魔術師。

大野部長の読み通りに動けばなんの心配もない。
それが営業部全体の総意だった。




これだけ仕事ができるんだから…
なんか一つや二つできないことがあるはずなのに。

大野部長の中にそれを見つけ出すことは、どうしてもできなかった。



顔は、社内のイケメンランキングで堂々の殿堂入りを果たしたほどのイケメンで。

人柄だって、ちょっと俺様なところはあるけれど。

その分ジェントルマンで優しくて…
ミスにも寛容、懐激深。


おまけに…
運動神経バツグンで、手先も器用で、字も綺麗。

歌に至っては…
課の女子みんなを虜にするくらいの…
美声の持ち主なんだから。


ホント、世の中は不公平だ。




そんな…
誰がどう見ても、非の打ち所がない大野部長。 





でも、僕は…

そんな大野部長の…

とんでもない弱点を、知っている。