大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。



先にこちらをお読みください♡(和也サイド)










飛び跳ねるようにして帰ってきた和。
しっかり抱き留めて、首筋の匂いを嗅ぐ。

少し離れていただけでも、恋しい。

甘えた俺に、和は言った。


和「今夜はな、シチューやで」



シチューやって言うたのに…
不思議なものが、テーブルに置かれている。


智「・・・練乳・・・?」


ガキの頃…
母ちゃんの目を盗んで、よく舐めたよな…

かき氷ん時、死ぬほどかけて…
甘くて食べられへんかったこと、あった。

「智はホンマにしゃーないな…」

そう言うて…
食うてくれたんは…

母ちゃん、やったかな…




和「あ、それな。料理に使うねん」


そう言うて…
和は楽しそうに料理を続けた。


出来上がったシチューを目の前に…
二人でいただきますをした。


一口食べる。


智「・・・・・!!!」


衝撃やった。

とてつもなく懐かしい味。

母ちゃんの、シチューに…
似てる…




…………………………………………………………




「にんじん、入ってる…」
「いやや、食べへん」
「キライやねん」

不意にあの日の俺が蘇る。


「そんなこと言わんと食べてごらん?」
「シチューのにんじんさんは、美味しいで?」


ニコニコ顔の母ちゃんにイヤとはいえず…
目を瞑って食べた俺。


「…ホンマや!」
「めっちゃおいしい!」


嬉しそうに、人参を食う俺の頭に…
大きな手が、乗った。


「さとし、人参食えたんか!えらいやないか!」




………………………………………………………




あの日の…
親父の手の温もりまで、蘇る。

俺はそんな記憶を消したくて…
目を閉じた。



不安そうに味を聞く和に、慌てて「美味い」と答える。

笑顔で喜ぶ和。

俺は、懐かしい面影を追うように…
夢中でそのシチューを食べた。





銭湯で…
湯につかりながら、考える。


シチューで思い出した、親父の手。

俺には…
過去の思い出とともに、親父の存在がある。

今は憎しみしかなくて。
俺の中から消し去りたいとすら、思っていたが…

でもそんな、怒りも悲しみも。
なんなら嫌悪の言葉さえ…

親父にぶつける事だって、できるんや。



でも和は…
和には、もうそれができる人はいない。

自分の思いをぶつけることも。
相手の思いを聞くことも、叶わない。


ならせめて。
その人が存在していたという事実。

その思い出だけでも…

見つけて渡してやりたい。


和が作ってくれた、クリームシチューは…

改めて和の過去を探す決意を、俺にくれた。





銭湯からの帰り道。
不意にきゅ…と…
絡めた腕に力を込めた和。

何かいいたそうに口籠もった唇を、優しく塞いだ。



明日、和を連れて行こうか。

親父さんの手がかりがあるかもしれない、東大阪に。

和には知る権利がある。

どんな現実でも俺が支えればいい…




でも…


唇を離して…

閉じていた目を開けると…

愛しい人は泣いていた。




こんな風に、泣かせたくない…

不意に強い気持ちが込み上げる。





もし辛い現実が、東大阪に眠っていて…

和に襲いかかったら。



知らなくてもいい現実を…

無理矢理目の前に突きつけることになったとしたら。


支えるなんて、言ったけど…
それこそ俺の、自己満足で。

そんな現実に…
どこまでも苦しむのも。
どこまでも絶望するのも。

全部和やないか…


和の苦しむ姿が見たくなくて。
結局俺は、口にできなかった。



とりあえず明日は…
一人で行こう。

和に伝える真実が…
どんな形をしているか。
それがもう少し、見えるまで…

俺は、和には黙っていると、決めた。





昨日と一昨日と同じように…
今夜も俺は和を抱いた。


後ろは痛むだろうから…

優しく、優しく、時間をかけて…

蕾が花開くまで待ってから…

買ってきたローションをたくさん俺に纏わせて…

ゆっくりと、和の中に入った。


和「…ああ….」


ため息みたいな、和の嬌声すらも…

自分のものにしたくてキスをする。




動く必要なんかない。


ただ繋がりたかった。



この人と…
ずっと、繋がっていたい。


一つになる。


俺はそれが望みで…
それしかなかった。


ただ、身体を重ねあう。

唇も、胸も、そして、奥深くも…



繋がったまま…

俺達は、一夜を過ごした。





*次回はこの後11時26分、和子ん家です!