大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
智side
side n
古びた小さな部屋の壁にかかる、丸いアートフレーム。
それは、狭い家の中をぐるっと全て見渡せる、とっておきの場所にかけられていて…
そこには、僕が生きていくための力をくれる、たくさんの写真達が住んでいる。
笑顔のばあちゃんに、ずっと一緒だった愛犬のそら。
幼馴染の相葉さんや、学生時代の友達達…
たくさんの想い出と共に…
今の僕を支えてくれている。
そして…
その、まさにど真ん中。
そこには…
ずっと、大切にしてきた、一枚の写真が飾られている。
真っ青な空に、模様のようにいくつも浮かぶ白い雲。
それが写真いっぱいに、広がっている。
上も下も、空。
一面の、空。
まるで空の中を写したような風景。
その鮮やかな空を背に…
浮かぶように映る、二つのシルエット。
…いや、正確には二つじゃない。
本当は二人の人影なんだけど…
その影は磁石のように、引き合って…
一つの影になっている。
遠い異国の地で撮られた、その空の中の写真。
シルエットだけで、互いの愛が伝わるような…
そんな写真。
僕も、いつか…
いつか、その中に、いってみたいと、思っている。
「いい天気…」
空を見上げる。
昨日の曇天が嘘のように…
今日は父さんと母さんがよく見える。
僕は思わず立ち止まった。
早く早く、とリードを引っ張るサスケに声をかける。
「ごめん、ちょっと待って」
いつものように二人の笑顔を残したくて…
僕は携帯を空にかざした。
大きな空が、携帯の中に吸い込まれる。
携帯の画面を確認して、僕は笑顔で頷いた。
そこに確かに生きている、僕の両親。
そんな二人を自慢するみたいに…
僕は今日も、その写真をインスタにあげた。
ものの数秒でいいね!がつく。
画面を確認する。
「パグさん、だ…」
僕は、そう呟いた。