大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
最終話です。
後からから聞いた話だけど、僕がサンタに会いに行くと聞いた大野さんは、その日のうちに飛行機のチケットを取り、すぐにスウェーデン入りしたそうで…
その足でここを訪れ、父さんに僕の写真を見せて頼んでいたんだって。
もし来たら引き留めてほしいって…
僕が、小さい頃母さんからサンタさんが父さんだ…と教えられて育ったことも必死で説明したらしい。
…通りで話がスムーズにいくわけだ。
考えてみたら、息子ですなんて、僕はひとこともいってない。
「大野さん、英語できるの?」
「…いや」
「…よく伝えられたね、そんなんで」
「…最初は身振り手振りだったが」
「全然伝わんねーから」
「最後には職員さんやら観光客の人やら巻き込んで」
「…大変だった」
淡々とそんなことを語る横顔を見ながら…
僕のことを伝えようとボディーランゲージを繰り返す大野さんが想像できなくて。
僕は思わず吹き出した。
「…おまえな」
「笑うけどこっちは必死だったんだからな」
僕を探して、僕に会いたくて。
必死になってくれるこの人に…
愛の深さを感じて、僕は笑いながらまた抱きついた。
優しく受け止めてくれる、大野さんの腕。
僕を包む腕に、雪がそっと舞い降りる。
僕らは雪に包まれる。
母さんが、まるでそうしているかのように…
僕のサンタは慌てん坊で…
クリスマスよりずっと早く、プレゼントを届けてくれた。
でも、僕が一番欲しいものを。
それだけって思うものを。
ちゃーんと、届けてくれたんだ。
やっぱり僕は、サンタの息子で…
きっと当日は忙しいからって、フライングで欲しいものをくれたに違いない。
僕は母さんの祝福を大好きな人の腕の中で浴びながら、そんなことを考えていた。
一番欲しかった、クリスマスプレゼント…
ずっと大事にして、生きていこう。
僕の幸せが…
父さんや母さんを幸せにする、と信じて…