大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
大野さんの名前を聞くだけで、涙が溢れる。
僕は頷きながら涙を拭った。
「…伝えた方がいいよ」
「多分おーちゃんも…」
「…ううん、いいの」
「でも…」
「丸山さんと一緒に住もうとしてた僕だよ?」
「…受け入れてくれるはずない」
「そんなこと!」
ぷるぷる…とかぶりを振る。
「都合よく丸山さんを利用しようとしてたくせに」
「簡単に他に乗り換える…」
「そんな奴だと思われたくない」
「…実際、そんな奴なんだけど」
自虐気味に笑う。
「…好きなのに、いいの?」
コクリ…と頷く。
そして、言った。
「僕、行きたいところがあるから」
「仕事辞めて、行ってくる」
「…大野さんのそばじゃないなら」
「…どこにいても同じ」
「なら」
「ずっと会いたかった人に、会ってこようと思う」
あの日。
失いたくなかったのは…
軽トラの狭い車内でも。
パン屋のレジの前でも。
どちらでもなかった。
本当に失いたくなかったのは。
大野さん。
場所なんてどこでもいい。
大野さんのそばに、僕はいたかったんだ。
それを失ってしまった今。
もうどこにいても一緒だった。
なら行こう。
父さんに、会いに。
こうして僕はロヴァニエミにやってきた。