大宮BL小説です。

閲覧ご注意ください。


































「…また、な」





大野さんはそう言って、僕の頬にそっと触れ
た。





ゴツゴツした手が、僕の頬を包む。



親指が頬をなぞる。



涙を拭う指は、どこまでも優しかった。






その指を、その手を。


離して欲しくない。



そう強く願う自分。






高鳴る自分の鼓動が、冷たい空気に溶けてい
く。


大野さんを見つめる。


視線が合わさる。






こうして…




二人で過ごす時はもう終わりで…





僕達の生きる道が重なることは、ない。





僕は、大野さんの隣を歩くことはないんだ…








「…寒いからもう入れ」






それだけ言うと、大野さんは背を向けた。





軽トラに素早く乗り込み、なんの余韻も残すことなく、行ってしまった。












頬に触れた、大野さんの手。





感触は消えない。





でもそこに大野さんの気配は全くなくて。





僕はそこから一歩も動けなかった。





















あれから数週間。


僕は、念願の地に立っていた。










あの日。


大野さんと別れてから。


僕は何もできなくなってしまった。








帰ってきた丸山さんには一度だけ会った。



そして、鍵を返して謝った。



好きな人がいること。



一緒には住めないこと。



全て伝えて謝った。







すると、丸山さんからも「ずっと近くにいた人を愛していることに気づいた」と告げられた。




その人は、学生時代からの友人で、僕との同居を知り丸山さんの幸せを祈ってそっと離れていってしまった人だった。




離れて初めて彼の大切さに気づいた丸山さんは、彼に思いを告げ、僕にもそれをきちんと話してくれた。



幸せそうな二人を見て、僕まで幸せな気持ちになった。





「…ねぇ」




丸山さんは言った。




「二宮くんの好きな人って…」




「おーちゃん、でしょ?」