大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
丸山さんのトラックは驚くほど大きくて、僕の自転車など難なく積めた。
よじ登るように、助手席に乗る。
こんな大きなトラック…
初めて乗った…
「…家はどこだ」
エンジンをかけつつ大野さんは聞いた。
「櫻井市です」
「…櫻井市⁈」
突拍子もない声が響く。
声の方を見ると、まんまるになった大野さんの瞳がこちらを見ていた。
「…櫻井市って、隣の県のか⁈」
「はい」
「え、すげぇ距離…」
「ありますよ」
「…あんなとこからチャリで来たってのか⁈」
「はい、そうですけど、何か?」
「…」
「…だって」
「自転車なら、タダですから」
「タダ…」
「おまえ…」
「…借金でもあんのか?」
ギアをドライブに入れた大野さんが、僕を横目で見た。
僕はその視線と言い方にカチンときて、言い返した。
「…ありませんよ」
「…別にいいじゃないですか」
「大きなお世話です」
「僕にはどうしても叶えたい夢がある」
「それにはお金が必要なんです!」
僕は大野さんの顔を見なくていいように、身体ごと窓の方を向いた。
あの視線…
馬鹿にしたような、蔑みの、視線…
なんて失礼な人なんだろう。
大きなお世話だ。
確かに?
僕は丸山さんを利用している。
でも、それはこの人には関係ないじゃないか。
なんでこんなに…
蔑まれなきゃ、いけないのか。
車は動き出す。
景色が流れる。
なんで僕、こんな人の車に乗ってるんだろう。
イライラしながら街路樹に目をやった。
信号に引っかかる。
僕は少し緑の鮮やかさが薄れた街路樹を見ながら、小さくため息をついた。
「…悪かった」