私がこんなブログでこんなこと言っても
なんてことはないんだけれど。
昔、夫の父(寿司職人)に、野菜の型ぬきやご飯の型ぬきがほしいな、と言ったことがありました。
舅は「なんで、そんなんがほしいんや」と怪訝な顔をして
私が「・・・いや、かわいいかと思って」と言うと「そんなん、しろとの家にはいらんで」と
優しくいいました。
しろと・・・・それは素人ということです。
玄人、つまり、料理でお金をとる人に必要なことが、素人の家庭に必要とは限らないのです。
私は素人の家の奥さん、家庭料理に色々な型ぬきはいらない、と舅は言ったのでした。
家庭料理というのは、玄人の料理とはまた別の次元のものです。
簡単に、お金をかけず、それでも季節のうつろいと、健康には気を配って。
それが素人の料理というものなのです。
鯛のかぶと割から、デミグラスソースの作り方、寿司飯の塩梅、お節料理全てのレシピ
それらを舅はしっかりと教えてくれました。
「ああ、これはウチの味になっとるわ」
お節を食べて、舅は破顔して言ってくれました。
ウチの、というのは素人の、舅の家庭の味という意味でした。
家庭の味は、玄人のものとは違うのです。
どちらが上というのではない、ご飯を型で抜かなくていいのです、家では。
私たちが若い頃は、しろとさんと玄人とは
はっきりと一線を画しているものでした。
つけまつげ、マニキュア、ヘアカラー・・・・・。
今はこんなこと言うと笑われるでしょうが
しろとと玄人の一線がもう無くなってしまいましたね。
普通の家庭の奥さんが、そんな髪の毛の色はしませんわ、とか
そんな爪はつけません、とか、まつげやまゆげにそんなにお金かけるもんじゃありません
なぜなら奥さんは「色」を売るものではないからです、とか。
しろとの奥さんは、こんなことはしないものです、という
私にとっては当たり前のラインがもう・・・・・・。
今の奥さんたち、お嬢さんたちは
昔の色を売っていた女の人たちと同じ格好をするのが
おしゃれと思ってらっしゃるのでしょうね。
色を売るとは、売春婦のことではありません。
芸能人、つまり自分の外見をお金にして暮らしている人たちのことです。
外見を飾ることに腐心していては、しろととして本来守らねばならないものを
身落としてしまう・・・・・。
それは、ある意味、恐ろしいことなのだ。
舅のいう「しろとはそんなことせんでもいい」の裏には
しろとがしなくてはならないことが、ぎっちりと詰まっていたと思うのです。