星を継ぐもの(原題:INHERIT THE STARS)

 1977年に上梓され1980年に翻訳されたSF小説です。・

作者はジェイムス・P・ホーガン 訳:池央耿 創元SF文庫

物語の時代は2028年。 構想のときから50年後の近未来を描いています。(それでももう4年後に迫っています)

 

 私がこの本に出合ったのは40年前の1985年頃。ソ連崩壊が1991年なのでこの頃はまだ冷戦時代、話の中ではまだソ連として登場します。しかし作者は当時から50年も経てば無益な軍拡はやめて力を合わせて宇宙に進出しているだろうと予測したようです。ところが、いまだに軍拡競争は続いており、戦争の火種は絶えません。非凡な想像力の作者もさすがに読めなかったのですね。

 

 さて、そうはいっても、宇宙の謎、人類の起源について書かれたSFとしては驚くべき洞察力です。

 物語は、月面の洞窟で深紅の異形の宇宙服をまとった死体(ミイラ)の発見に始まります。この月人(ルナリアン)は人間に酷似していたものの、放射性炭素測定ではなんと5万年以上前の遺骸であることが判明します。

 

 

NASA提供

 

 “チャーリー”と名付けられたこのルナリアンの正体とは? 幾つかの遺品から科学技術を駆使した謎解きが始まります。

 現実では1972年のアポロ17号を最後として月面に人類が降り立っていませんが、近年月面に不可思議な洞穴が発見されたり、月の裏側についても何か公表されていない秘密があるように思われます。

 物語では、月の謎、人類の起源、ノアの方舟、惑星間航行などについて、解剖学者、言語学者や科学者たちが推論を重ね次々と謎を解き明かして行きますが、当時作者にとっては未知であったはずの実際の50年間に解ってきたことと比較しても納得がいき、決して荒唐無稽ではなく作者の想像力は輝きを失っていません。

 

NASA提供

 

 ああ、この謎のことを話したくて堪らないけど我慢します。ぜひ読んで下さい。私も40年ぶりに読み返しました。電子書籍です。もう文庫本の活字は読めません。ありがたいです。

漫画にもなっているようですけど、やはり文字のほうが読者の想像力を掻き立てますね。

 読み進むにつれ謎は次々に解けますが、新たな謎もでてきます。

 

それは J.P. ホーガンの続編で…。