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 「彼には打てない球(ボール)はないのか!」

これは大谷が悪球を特大ホームランしたときの大リーグ中継のアナウンサーの絶叫です。

「彼女には弾けない音はないのか!」これは私がHIMARIちゃんの演奏で感嘆したつぶやきです。

 

 あのパガニーニが自身の持つ超絶技巧を駆使して作曲した音のすべてを軽々と(少なくとも見た目には)紡ぎ出すこの運指とボウイング、まさに驚きです。

 

 そこでこれまでに天才と謳われた人の演奏も聴いてみることにしました。16才の庄司紗矢香です。同じパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番。ウーン、非の打ちどころがない。正確で力強い。さすがですね! また、改めてパガニーニの作品のすばらしさにも感動しました。しかし、どこか惹き付けるものが違うような気がするんです。

  

  音楽評論家の片山杜秀氏の表現によると、「演奏者が作品をどのように理解し料理するか」ということになるのでしょうが、庄司紗矢香が理解し料理したパガニーニはもちろん譜面にも忠実で(多分)、表現も技術も見事でした。それでも私はHIMARIちゃんの演奏に魅かれるんです。なぜでしょうか? 

 

 やはりファンのコメントで、「よくあんなに長い楽譜を暗譜できるものだ」と舌を巻いていますが、思うに、彼女は暗譜というよりも、作曲家が感性から絞り出したもっとも心震わす音の繋がりの意味を理解し共感できて、作曲家の想いを追体験しているのではないでしょうか。この音の次はこの音よね、と一音一音を慈しんで弾いているようです。

 

 それから、拍の長さと音の強弱、抑揚、セッションのタイミング、判断力、優しさ、どれをとっても卓越しています。協奏したN響の前列のチェロのお二人が、彼女の独奏の出だしのタイミングにウンウンと頷きあっていたのが印象的でした。彼女は曲のすべての流れを把握していて、恐らく指揮者の素質もあるのではないでしょうか。一流音楽家達と対峙できる度胸にも脱帽です。

 

 

石川県立音楽堂

 

 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を聴くのが日課になりました。そして幸運にも5月の金沢のコンサートのチケットを入手することができました。オーケストラ共演とDUOの両方です。今からとても楽しみです。

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