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旧司法試験から予備試験、司法試験へ

『花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方』~THE BLUE HEARTS「情熱の薔薇」

お陰さまで、合格しました。長かった受験が、ようやく終わりました。
(注意事項)
再現は,反省点も含め,試験直後に作成したものです。
あまりにもあまりなので,【反省点等】欄に,一部追記したものがありますが,再現は当初作成のままです。全く完全に間違っているのに,自分で気づいていない点が沢山あるはずです。内容面で信用することは,絶対にしないでください!
 

【反省等】

1.刑事系は、どうにも、苦手なまま。とりあえず、刑訴は8ページ真ん中あたりまで、分量だけは書いたが。

2.設問1、後半部分、任意捜査の限界を超えて違法とし、強制処分(検証)だと書いていない。差がついてしまった。

3.設問2、全体として、ふわふわした記述。伝聞もうまく書けなかった。要証事実の書き方がよくわからなかった。特にメモは、全く間違っているようだ。

4.やはり、基礎知識のレベルで、不完全なのだろうか。勉強してもできる気がせず、悩ましい。

 

【刑訴一部(設問2)再現】

第1 設問1 (省略)

第2 設問2
1.証拠収集上の問題点について
(1)2月16日にQが甲を取り調べた際、甲に対して、「検察官が、改悛の情を示せば起訴猶予にしてやると言っているので、正直に話した方が良い」との趣旨のことを言った。これに対して甲は、自己が不起訴処分になることを期待して、「本当のことを話します」と言って、詐欺であったことや共犯者が乙であること等を供述して自白した。そこで、この自白は、任意性に疑いのある自白(319条1項)として、証拠とすることができないのではないか。
 自白法則の趣旨は、強制による自白など319条1項に列挙された方法で自白を得た場合には、①虚偽を誘発する可能性があること、②黙秘権等の人権を侵害すること、及び③適正手続確保の観点から違法に得られた供述を証拠から排除する必要があるためである。
 「不起訴の約束」をすることは、上記①から③のいずれの趣旨にも反するものであるから、本件の甲の自白は「任意性のない自白」として証拠とすることは許されない。
(2)Pは違法に得られた甲の自白を疎明資料として、乙の逮捕状を得て乙を逮捕するとともに、Gマンション1003号室の捜索差押許可状で同室を捜索したものである。
 上記のとおり、自白法則には、③の違法な証拠を排除するという趣旨がある。この趣旨から、違法な自白を疎明資料として得られた逮捕状及び捜索差押令状に基づいて実施された逮捕及捜索差押も、やはり違法である。したがって、乙の逮捕は違法である。
(3) もっとも、乙は逮捕後の取り調べにおいて、Pらから甲の供述内容は聞かされなかったものの、甲が自白したものと考え、任意に詐欺を行ったこと等を自白するとともに、自ら、詐欺で使った道具をM市内のHマンション705号室に隠してあることを自供した。この間、Pら捜査員から特別に圧力を受けたとの事情は見られない。
 先行する捜査手続に違法があっても、独立して証拠が得られた場合や、あるいは、先行する違法手続と後の捜査手続との関連性が弱まり、希釈化された場合には、後の手続きで得られた証拠を適法な証拠とすることができると考えられる。本件の乙の自白については、乙が任意で自白したものであるから、乙逮捕以前の違法な捜査との関連性は薄くなっていると考えられるので、乙の自白は適法に得られたものである。
(4)Pは、適法に得られた乙の自白を疎明資料として、Hマンション705号室を捜索場所とする捜索差押許可状の発布を受けたのだから、この捜索差押許可状は適法であり、これに基づく捜索も適法である。そして、捜索の結果得られた本件文書及び本件メモの差押についても、適法である。
2.本件文書及び本件メモの証拠能力について
(1)本件文書の証拠能力について
 ①本件文書には人の会話内容等が書かれている。そこで、伝聞証拠(320条)として証拠とすることができないのではないか、問題となる。
 伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする供述証拠であって、原則として証拠とすることはできない(320条)。これは、供述証拠が、知覚、記憶、表現という過程をたどるため、各過程に誤りの入る可能性があり、反対尋問等でチェックする必要があるからである。
 そうすると、伝聞証拠とは公判廷外の供述証拠のうち、内容の真実性が問題となる場合に限られるので、伝聞か否かは、要証事実が何であるかによって相対的に決定されることとなる。
 ②本件文書の内容は、Vが受けた電話でのやりとりとほとんど同じである。そして、乙は、「これはだます方法のマニュアルです」と供述し、本件文書がマニュアルであることを認めている。よって、本件文書は振り込め詐欺のマニュアルなのは確実である。そうだとすると、本件文書の文言は、文書作成者が「観察」した事実が書かれたものではない。また、枠外の※の記載も、マニュアル作成者による指示内容が書かれたものであって、作成者が知覚、記憶した内容が書かれたものでもない。
 ③よって、本件文書は、その内容の真実性が問題となる伝聞証拠には該当しない。そして、本件文書には乙の筆跡によるV方の電話番号が書かれているとともに、丙の指紋が付着しているのであるから、要証事実を「本件文書の存在及び乙と丙の両名が本件文書を見たことがあること」とする限りで、非伝聞証拠として証拠とすることができる。
(2)本件メモの証拠能力について
 ①本件メモには、乙が丙からの電話受け、これを書き取った内容が書かれていると思われる。そうすると、本件メモは、乙が知覚し、記憶して書き取った事実が書かれているので、その内容の真実性を問題とする限り、伝聞証拠として証拠とすることができないのが原則である。
 ②しかし、内容の真実性を問題とするのではなく、「1/5丙からtel」と書かれていることから、乙が丙と何らかの意思を通じていたことを推測することはでき、「本件文書」の存在と併せて、乙丙間の共謀を推認することができる。もっとも、これを推認するには、乙が本件メモを真摯に作成したことが前提として必要である。
 ③本件メモのうち、「1/5丙からtel」以外の行に書かれた内容は、甲が自白した内容とも一致しているので、本件メモは、全体として乙が真摯に作成したものであると推測することができる。
 よって、「本件メモの存在と、乙丙が何らかの意思の連絡をしたこと」を要証事実とする限りで、本件メモを証拠とすることができる。 以上

(再現率は85%程度。もう少し、問題文の事情を引用し、長かったと思う)

(注意事項)
再現は,反省点も含め,試験直後に作成したものです。
あまりにもあまりなので,【反省点等】欄に,一部追記したものがありますが,再現は当初作成のままです。全く完全に間違っているのに,自分で気づいていない点が沢山あるはずです。内容面で信用することは,絶対にしないでください!
 

【反省等】

1.刑事系は苦手なので、そこそこの点数を目指したが、そこそこには届かない。

2.全体的に規範があいまい。

3.甲の罪責、自救行為の処理が間違っていると思う。

4.乙の罪責で、共謀共同正犯ではなく、教唆にするという痛恨のミス。おまけに、盗品有償譲受の既遂を認定するというダブルミス(泣)。

5.丙の罪責は、時間が足りず、非常にあっさりになった。器物損壊については、まったく思いつかなかった。

6.最低限、規範を覚えて吐き出せば、もう少しましになったと思う。刑法各論の知識も今一つだし、よくなかった。

 

【刑法】

第1 甲の罪責
1.甲が、12月15日、A社の新薬開発部の部屋に入ったことについて、建造物侵入罪(130条)の成立を検討する。
 甲は、乙と食事をした12月1日現在は新薬開発部の部長であったが、12月3日には財務部経理課に異動となり、12月15日現在は新薬開発部の従業員ではない。A社では、各部がその業務上の情報を管理し、また、各部は他の部から独立した部屋で業務を行っている。建造物侵入罪の保護法益は、建造物の管理者の管理権であり、その意思に反する侵入が建造部侵入罪となるところ、新薬開発部の管理者は甲の後任部長であり、新薬の書類を持ち出す意図をもった甲が新薬開発部の部屋に入ることは、まさに後任部長の意思に反する。また、甲は書類を持ち出すために入っているのであって「正当な理由」はない。
 よって、甲には建造物侵入罪(130条)が成立する。
2.甲は、当初は業務上横領罪(乙の罪責で詳述)を実行する予定であった。しかし、12月3日には財務部に異動となったものである。そこで、甲が金庫から新薬の書類10枚を取り出した行為について、窃盗罪(235条)を検討する。
(1)まず、新薬の書類は、製薬会社にとって極めて価値の高い情報が書かれた書類であるから、「財物」に該当する。また、「他人の」とは、「他人の占有する」の意味であるが、新薬の書類は製薬会社にとって極めて重要な財産なので、その所有はA社にあり、甲の後任の部長が、A社の補助機関として管理し占有していたものである。よって、新薬の書類は「他人の占有する」財物である。
(2)そして、「窃取」とは占有者の意思に反して自己に占有を移すことであるが、甲は後任部長の意思に反して金庫から新薬の書類を取り出し、自己の占有に移したので、「窃取」したと言える。
(3)また、窃盗罪には、書かれざる要件として不法領得の意思が必要である。これは、①権利者を排除して、②物の経済的用法に従い利用処分する意思である。甲には当然①が認められるが、②については、甲は自ら新薬の書類を活用するわけではないので、該当しないようにも思える。しかし、第三者に譲渡して利益を得ることも②に該当するところ、甲は乙に譲渡して金銭を得ようとしていたので、不法領得の意思は認められる。
(4)以上により、甲には窃盗罪が成立する。
3.(1)甲がCのかばんを取り上げた行為は、客観的には窃盗罪に該当する。Cが占有するかばんを、Cの意思に反して取り上げ、自己の占有に移したからである。
 しかしながら、甲はCが自己のかばんを盗んだと勘違いしていたのであって、内心の意識としては、自休行為を行う意思であった。
 このため、甲には窃盗の故意を欠くので窃盗罪は、成立しない。
(2)また、甲がかばんを引っ張った結果、Cは加療1週間の傷害を負っている。
 甲は待合室で自分のかばんを放置して盗まれるという不注意があり、また、そもそも、新薬の書類を窃盗したことでこのような事態となっているのであるから、甲には重大な過失があると言える。
 よって、甲には重過失致傷罪が成立する。
4.以上のとおり、甲には建造物侵入罪、窃盗罪、重過失致傷罪が成立し、前二者は手段・目的の関係なので牽連犯となり、重過失致傷罪とは併合罪となる。
第2 乙の罪責
1.(1)12月1日、乙が甲に対して「是非、その書類を持ち出してください」といって新薬の書類の持ち出しを働きかけたのは、業務上横領罪(253条)の教唆に該当する。業務上横領罪の構成要件は、「自己の占有する」「他人の物」を「横領すること」である。
 当時、甲は新薬開発部長として新薬の書類を管理し、占有していた。また、新薬の書類はA社の所有物である。さらに、「横領」とは不法領得の意思の発現を意味し、委託の趣旨に背いて権利者でなければできない行為をすることだが、甲はA社からの新薬の書類の管理を委ねられていたのに、その趣旨に背いてライバル会社に譲渡するという、権利者でなければできない行為をする予定であったので、業務上横領罪を実行する予定であった。
(2)しかし、現実に甲が行ったのは窃盗罪なので、乙の認識とは異なっている。乙は甲からの電話で「所属が変わったことは知りませんでした」と言っているので、甲からの電話を受けるまで甲が業務量横領を実行すると考えていたので、事実の錯誤がある。
 これについて、故意犯が重く罰せられる趣旨は、規範の問題が与えられているのに、あえてこれを乗り越える点にある。そして、規範は構成要件で与えられているので、構成要件にズレがある場合でも、保護法益及び行為態様が重なる限りで犯罪の成立を認めてよい。
(3)窃盗と業務上横領については、確かに、同じ財産犯として保護法益の重なり合いはある。しかし、行為態様が全く異なるので、重なり合いを認めることはできない。
2.もっとも、乙には盗品等有償譲受罪の成立が考えられる。盗品等有償譲受罪の対象は財産犯によって領得された物であればよく、具体的にどのようにして領得されたかを認識する必要はない。
 乙は、横領ではないとしても、財産犯によって得られた物であることは認識していた。そして、甲からの電話を受け、300万円で交換することを約束した時点で、確定的に契約が成立した。
 よって、乙には盗品等有償譲受け罪が成立する。
第3 丙の罪責
1.(1)丙が甲のかばんを抱えて待合室を出た行為について、窃盗罪(235条)の成立を検討する。
 窃盗罪の構成要件は第1の2に記載したとおりである。かばんは「財物」であり、甲が所有占有していた「他人のもの」であるが、甲は待合室にかばんをいて自動券売機に行き、この間、かばんから離れていたので、「占有」の有無が問題となる。甲の占有が認められなければ、占有離脱物横領罪となるにすぎないからである。
(2)「占有」とは。占有の意思と占有の事実からなるが、必ずしも現実に手で持っていなければならないものではない。例えばレストランで食事をするときに、テーブルの上にスマートフォンを置いて食事をしても、占有を失うことにはならない。
 そこで、占有は、物と占有者との距離、離れた時間、周囲の状況、占有者の意思などのほか、特に、占有者の占有回復可能性によって決まる。
(3)待合室は誰でも出入りできる構造ではあったが、待合室と券売機の距離はわずかに20メートルしか離れておらず、甲が待合室を離れて自動券売機に向かった時間は11時15分で、丙が甲のかばんを抱きかかえて待合室を出たのは、そのわずかに1分後、甲が券売機から戻ろうとしたのもわずか2分後であった。こうした事情を考慮すると、かばんの占有をすぐに回復できる状況であったと評価できるので、丙がかばんを抱きかかえた時点では、かばんに対する占有は、いまだ甲にあったと考えられる。
 そして、丙は、甲の占有する甲のかばんを、自己の占有に移したのであるから、窃盗罪の構成要件に該当する。
2.もっとも、第1に記載のとおり、窃盗罪の成立には不法領得の意思として、①権利者を排除して、②物の用法に従って利用処分する意思の二つから成る。しかし、丙はホームレスの生活をしており、甲のカバンを持って交番に行けば、逮捕されて留置施設で寒さをしのぐことができると考えて、ベンチに置かれた甲のかばんを窃取したのだから、自首するためにかばんを盗んだのであって、②の意思に欠ける。
 よって、丙には不法領得の意思がないので、窃盗罪は成立しない。 以上

(再現率は、もう少し事実を引用しているので、実際の答案はもう少し長い。85%程度)