設問1
1.小問(1)
売買は賃貸借を破る。つまり、債権は物権に劣り、本問でXは所有権を承継取得したのであるから、賃借人であるBは対抗できないのが原則である。
もっとも、賃借権は「登記したとき」は「その後物権を取得した者」に対抗できる(法605条)。また、建物賃貸借については、「登記がなくても、引き渡しがあったとき」には、その後の物権取得者に対抗できる(借地借家法31条1項)。
しかし、上記の通り、あくまでも債権は物権に劣るのが原則なのであるから、被告が「抗弁」として主張する必要がある。このため、④の事実が占有権限の抗弁事実として必要になる。
2.小問(2)
賃借権は転貸できないのが原則であって、「賃貸人の承諾を得」て、はじめて転貸できる(612条1項)。ところが、③から⑥までには、「承諾」の事実がない。正当な占有権限を主張するためには、「転貸借について貸し主の承諾」が、「⑤の事実に先だって、あった」ことが必要になるところ、これは例外なのであるから、被告が抗弁として主張する必要がある。
この事実を主張しなければならないので、③から⑥までの事実だけでは足りない。
設問2
本件契約書には、A及びBの署名がある。署名があるため、真正に成立したものと推定される。もっとも、この推定は事実上の推定なので、反証ができる。
本件契約書の4は手書きなので、筆跡の対照(229条1項)によって証明することが考えられる。すなわち、転貸を承諾するような条項は、一般的に借主が追記するとは考えられず、貸主が追記するはずである。そこで、Aが書いた文字ではないことが証明されれば、契約書の成立の真正が否定される。
そこで、本件契約書の4の文章が、Aによって書かれたどうかを、筆跡の対照によって確認するように、申し出るべきである。
なお、Bは既に死亡しているため、「文字の筆記を命じる」ことはできないので、本件契約書の4については、Bの署名等で確認することになる。
設問3
1.小問(1)
Bは平成24年11月2日に死亡したので、YはBを相続した。賃借権も相続の対象となるため、Yは自らの転借権ではなく、Bの賃借権をそのまま承継したと主張することができる。このため、Qとしては、Bが死亡したことを抗弁として主張することになる。
2.小問(2)
Pは、再考弁として、Aが、平成23年7月16日に、Bに対して、本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をしたことを主張する。
解除により、将来に向かって賃貸借契約は無くなる(民法620条)のであるから、その後YがBを相続しても、上記(1)の抗弁は意味のないものとなるからである。
設問4
1.①から⑦までの事実について、当事者間に争いがないので、そのまま判断の基礎とされる(弁論主義第2テーゼ)。
これをもとにすると、平成24年7月16日にAがした解除は、有効なものとなりそうである。
しかし、賃貸借契約は、継続的な契約であることから、無断転貸についても、「信頼関係を破壊するに足りない特段の事情」がある場合には、解除がされないと考えられている。そして、これは、無断転貸が原則として解除原因となることの「例外」なのであるから、被告が、「再々抗弁」として主張しなければならない。
2.設問4の事実によると、Yは就職に伴い乙市に来たので、定職に就いている。またYはBの子供であるところ、B(解除時には生きていた)が、実質的に保証人としての役割を果たしており、賃料も遅れずに払っている。
こうした事実から、「特段の事情」が認められるので、解除できないように思える。
しかし、裁判所は当事者が主張しない事実を認定することは、たとえ心証を得たとしても、することができない(弁論主義第1テーゼ)。
本問では、被告人側から、再々抗弁の主張は無いので、結局、解除は有効との判断を行う。
設問5
1.Pは、受任に当たり、「事件の見通し」や「処理方法」などについて、適切な説明をすべきである(基本規程29条)。
2.また、本件の訴訟は、先行きによってはYが勝訴し、その場合にはAとXとの利害が対立する場面が予想される。その場合は、基本規程27条、28条の趣旨に反するような事態が生じ得る。
このため、「辞任の可能性そのたの不利益を及ぼすおそれ」があることについて、説明すべきである(基本規程32条)。
※設問1(1)だが、まずは「もとづく引き渡し」の必要性を書くべきだったのだろう。
※設問2は、契約書は二通ありますね。社会人受験生のブログで気づいた。
※設問4、失敗。問題文に「主張した」って、書いてある。読み落としではなく、勘違い。つまり、「再々抗弁しますよ」って言わないと、ただ事実を主張するだけでは、ダメだと思ってしまった。なんで、現場で、そう思ってしまったのか、わからない。けっきょく、よく分かっていないということかも。
※実務は、去年はE判定。自分としては、かなりマシになったつもり。