これは過去のお話です。

時間軸が前後する場合があります。


入所して間もない頃。

父は私たちと一緒に帰ろうとしました。


じゃ、帰ろうか!


お義父さん、今日は車できてないんですよ。

電車で来ちゃったから。

ここは乗り換えが大変だから今度車できますね。


夫がそう言いました。

父は明らかに落胆して、また椅子に座りました。


週に1.2回は顔を出していました。

楽しそうにしてる時もありましたが、明らかに不機嫌で、私が入っていくと心をよむように、

じーーっと私のことを見るのでいたたまれませんでした。

多分、正気である時、自分が施設に入れられたんだ……と思う瞬間があるのだと思いました。


施設のスタッフの皆さんは本当に良くしてくださり、

この施設を選んでよかった‥‥と思いました。

認知症がひどく進行するまでは、笑顔もありましたし、他の入居者さんたちと会話もしていました。


入居から5ヶ月ほど経ったある日。


新設の特養から入居可能ですが……とお返事が来ました。

それは春にオープンの新築施設で、木を基調とした内装のお部屋など正直今の施設より良いのではないか‥…と言うくらいのものでした。

我が家からも車で15分程度。

願ったりかなったり。


1区画に10名。

真ん中にリビングとテーブル。

それを囲むようにお部屋です。

オープン当初は、実際の入居者の半分の人数から始める‥…と言うことでその中に父が入りました。


入居した有料老人ホームを退去することにして、

介護タクシーで新しい特養に引っ越しました。

月に30万以上の費用が15万ほどになりました。

これでお金のことは心配しなくて済む……

弟とそう話しました。


ただ……心配があるとすれば、有料老人ホームは3人に1人のスタッフでしたが、全員が介護士資格がありました。


今度の特養は10人に3人。

そして資格は1人だけ。後は資格のないスタッフでした。