ぼく自身は「おまえ」と呼ばれること少ない人生を送ってきた。
両親はぼくを「ぼうや」と呼んだ。20歳前後、親しい友だちと「おれ、おまえ」と呼び合っていた程度である。
成人してからも、ぼくを「おまえ」と呼ぶような「上司」や「先輩」はいなかった。そうゆう環境ではなかった。
同じ理由で、年下の男女を「おまえ」と呼んだことはない。自分の優位性や威厳みたいなものを発揮する必要がなかったからだし、また、そんなふうに「おまえ」を連発する人間を好きになれない。
また、自分の妻や娘を「おまえ」と呼んだことは一度もない。それに抵抗もある。
歌人・岡井隆は1928年(昭和3)生まれ。
初恋時代は相手を苗字で「××さん」と呼び、恋愛関係になると「ゆうこさん」と呼び、結婚すると「ゆうこ」と呼び、そして・・・タイトル歌である。
ふたりの距離感を推測しているんである。「おまえ」と呼んでみたら「はい」と自然な返事してくるほどインティメットなカンケイになっているのか、それとも相手は驚いてしまうのか、嫌悪感をもつほどに、どうなんだろう。って男の勝手な歌なんだけど、妙なデリケートさがあり、また深刻風な滑稽さもある、その感じをよく伝えてくる。
いまは? 「おまえ」って職場や家庭で呼ばれたら、どう感じる?
朝日新聞の「アスパラクラブ」会員を対象に行われたアンケートでは、約80%の人が「不快」「腹立たしい」と答えていた。「うれしい」は1%にも達せず、「オレ、おまえ、の時代は終わった」「おまえ呼ばわりは一種のパワハラ」とゆう声も。
岡井隆は今年80歳である。
若くなるにつれて「おまえ」呼ばわりする人は減ってきている。妻を「おまえ」と呼んで逆切れされて呼ばなくなった夫も団塊あたりには多いはず。
最近では親から「おまえ」と呼ばれて育った女の子はほとんどいない。それを「おまえ」呼ばわりする若い男を見かけるが、たいてい男は捨てられる。K・Yとゆうことか。
職場でも、尊敬する上司から「おまえ」と呼ばれて意気に感じる人もいるが、尊敬できない人だったら反感をおぼえるとゆうことか。
コトバがもっともススんでいる高校生カップルは、「オレ」「おまえ」と呼び合っているらしい。
やっぱり、妙なデリカシーと深刻な滑稽さもあるね、この問題は。