水木しげる先生が作品を通して伝えたかった事:町山智浩 | 女性イラスト専門ブログ

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先日、映画評論家の町山智浩さんが
TBSラジオ『たまむすび』の中で、
亡くなった漫画家の水木しげる先生を追悼。
影響を受けた水木しげる作品などを中心に話していました。

そのお話しの中で
水木しげる先生が作品を通して伝えたかった事を
町山さんが語っておられるので
もし、よろしかったら お付き合いください

※話しがとても長いのと
 ちょっとHな話も含まれていますので
 だいぶ端折られて頂きます(^_^;)

悪魔くん

(町山)
これね、悪魔くんだけど悪魔くんじゃないんですよ。
子供に変な名前をつけた馬鹿親がいましたけど。
そうじゃなくてですね、これは普通の人間の男の子なんですよ。
悪魔くんっていうのは。ただ、天才的すぎて、
知能指数が異常に高すぎて、『悪魔的』
って言われてるだけなんですね。


で、彼はですね、何をやるか?っていうと、
昔の古文書とかを調べて地獄の底にいる悪魔を呼び出して。
その悪魔と契約するんですよ。悪魔くんは。
で、悪魔と契約すると、『ファウスト』でもそうだったですけど、
死んだ時に魂が悪魔に取られて地獄に落ちちゃうんですね。

そのかわり、ひとつ願いを叶えてくれるんですよ。
悪魔は。で、その時に悪魔くんは自分の命と
引き換えに悪魔にたのんだことっていうのは、
『全人類を幸せにしてくれ』っていうことだったんですよ。


これ、イエス・キリストですよ。
全人類のために自分を犠牲にしようとした男が
悪魔くんなんですね。
ところが、この漫画がすごくてですね。
呼び出してみた悪魔は、何にもできない人間だったんですよ。

何にもできないんですよ。
で、『お前、悪魔だろ?呼び出したんだけど、
何かできないのか?』って言うと、
『いや、何もできない』って言うんですよ。
その悪魔が。『俺にできるのは、金儲けと口がうまいことだけだな』
って言うんですよ

『えっ!?』ってびっくりするんですよ。
悪魔を呼び出したのに。せっかく。でも実はその悪魔こそが
本当の悪魔だったんですよ。


あらゆる口のうまさで人を騙していって、
どんどんどんどん金持ちになっていって、
日本の経済界を裏から仕切って、
ものすごい格差社会を作り出すんですよ。彼が。


それで最後に、『ああ、彼こそが本当の悪魔だったんだ!
悪魔っていうのはこの現代のシステムそのものだったんだ!』
っていうことに気がつくという。すっごい漫画でしたね。


原作の時の、そういうダークな感じっていうんは、アニメでやる時は
あんまり関わってないですね。
まあ、でもそのままやったらぜんぜん違う話になっちゃうんですけど。
で、僕はそれを読んだ時にすごく感動した言葉があってですね。
まあ、悪魔くんは結局これで失敗しちゃうわけですよ。
世界を、全人類を幸せにしようとしたのに、
とんでもない悪魔を呼び出して失敗しちゃうんだけど。
『でも、誰かがやらなきゃいけないことなんだ』
っていうセリフが出てくるんですね。いちばん最後のところで。


『世界がひとつになって、
国とか戦争とかがなくなって。
貧乏人とか金持ちもなくなるような社会。
それを作ることが
人類の宿題じゃないのか?
みんな、その宿題を忘れてねえか?』

って言うんですよ。最後に。


でね、この水木しげる先生の世界のこの深さっていうのは
すごいものがあるんですよ。
だから、『河童の三平』っていう漫画があるんですけど。
それは元は芥川龍之介の『河童』っていう小説がありましたよね。


あれが元になっているようで。
河童の世界っていうのはユートピアなんですよね。
そこが人間の世界と並行して存在するっていう話なんですよ


水木しげる作品の妖怪たち


で、妖怪っていうのは水木しげる先生の漫画の中ではそういうもので。
彼自身がこういう風に説明しているんですけど。
『妖怪とかは先住民みたいなものなんだ』と。
要するに、昔からずっといるものなんです。
人間の前から。で、そこに人間とか文明とかができてきちゃって。
で、その間に立つのが鬼太郎なんですよね


だから鬼太郎って妖怪を退治しているんじゃなくて、
たいていは地下鉄を作ったり、
街を開発したりね、
田舎の方を開発したりしてると、
そこに住んでいる妖怪が困って。
で、人間たちにいたずらをすると。
撃退しようとしてっていう話で。
で、そこの間に鬼太郎が立って・・・
っていう話なんですね。



だから妖怪っていうのは自然だったり、
田舎の住民だったりするような、
そういう人間社会の被害者として存在してるんですよ。


沖縄に鬼太郎が行く話


で、すごい話もあって、沖縄に鬼太郎が行く話があるんですけど。
そこでは沖縄にアメリカとかから外国の妖怪が攻めてくるんですよ。
まあ、アメリカの妖怪ですけど。ベアードっていうね。


で、沖縄の島の住民たちは洞窟に逃げ込んでいるんですよ。
これは沖縄戦なんですよ。この話って。
沖縄戦の時に日本軍は民間人まで巻き込んでね、
自分たちは途中で勝手に自決しちゃって。
民間人を大量に死なせることになったんですけども。


鬼太郎はその日本軍がちゃんとやらなかったことを
きっちりやって、アメリカの妖怪を撃退して、
島の人たちを救うんですね。
だからそういう歴史的な被害者になっているようなものを
救っていく話が多いんですよ。


だからね、ベトナムにも行ってるんですよ(笑)。
戦っているわけですね。鬼太郎は。
で、やっぱりそれは・・・あ、そうそう。あとね、
妖怪ぬらりひょんっていうのがいるんですけど。
鬼太郎の中に出てくるいちばん強い敵っていうか、
いちばん悪いやつってぬらりひょんなんですよ。
でも、ぬらりひょんってどんな武器があると思います?


別に妖怪のくせに、なんにも妖術がないんですよ。
ぬらりひょんは。口がうまいだけなんですよ。


これ、怖いですよ。いちばん悪いやつなんですよ。
ぬらりひょんって、金を集めていて、
預金通帳に結構お金がある妖怪なんですけど。
で、趣味は時々繁華街とかに行って、
デパートとかに爆弾を投げ込んで面白がることなんですよ


ぬらりひょんって。
でも、
なんの能力も持っていないんですよ。
これって悪魔くんの悪魔と一緒で、
人間こそが
いちばん凶悪なんだってことですよね。
ぬらりひょんって
人間そのものなんですよ。


なんかね、すごくね、深いんですよ。
水木先生の漫画っていうのはね。
で、やっぱり水木先生といえばね、
どうしてそういう漫画を描くか?っていうと、
やっぱり戦争体験っていうことになりますよね。
で、いっぱい自分の戦争体験のことを文章でも書いて、
漫画でも何度も何度も何度も描いている人なんですけども


戦争体験

水木先生は
パプアニューギニアの戦線に第二次大戦で行かされて。
そこで自分の部隊が全滅すると。
自分以外全員死ぬという事態になったわけですけどもね。
で、その中で自分たちの部隊が死んで、
自分が生き残って味方のところに行くと、
なんて言われたか?っていうと、
『なんで生きてるんだよ?』って言われたんですね。


そう。それは『総員玉砕せよ!』
っていう漫画にもなっていますけども。
まあ、その時のことは
詳しく他の本でも書いてあるんですけど、
とにかくそこに行った時の部隊の偉い人たちは
『玉砕する!玉砕する!』って、
そればっかり言っていたそうなんですよ。



戦う前から。戦争に勝つことを考えるよりも、
日本軍っていうのはその時、すごい異常な状況になっていて。
いかに死ぬか?っていうことばっかり
みんな考えていたみたいなんですね。


で、せっかく生き延びた味方兵が帰ってきても、
自決するか、銃殺か、このまま敵に突入して死ぬか。
その3つのうちのどれかしか選べないっていう状態だったんですよ。

でもそれ、戦いに勝つことと全く関係ないですよね?


だから、水木先生はいつも言っているのは、
『こんなことやってるから負けたんだよ』
っていうことなんですよ。

なぜ、敵ではなく味方に殺されなきゃいけないんだ?


日本軍っていうのはそういうことをやっていたんですよね。
なんのための自決なのか、玉砕なのか、まったくわからないと。
そういうことをやっていたってことを
批判しているんですよ。すごく厳しく。



で、その時に水木先生は
、要するに『死ね!死ね!』って
言われているところで逃げ出すわけですね。
まあ、その時に腕を失いますけど。爆弾で。
逃げ出して、そこの原住民の人たちと会ったんですよ。
原住民の村に行ったんですね。

そしたら、みんな美味しそうにバナナを食べて。
ごちそうを食べているんですよ。
で、楽しく歌って踊ってゴロゴロしてるんですよ。
それで、水木先生が来たら、
『おお、来たか、来たか。メシ食え!』って食わせてくれて。
ところが、部隊に帰ると『死ね!死ね!』
って言ってるんですよ。
『お国のために死ね!』って言ってるんですよ。


どっちが利口か?ですよ。
どっちが本当の文明人なの?
彼の心にある妖怪っていうのは、
その原住民の人たちですよね。



そこにユートピアと人間の本当の姿があるんですよね。
で、彼がずっと、水木先生がコーヒー飲んだりね、
美味しいものを食べたりする
っていう漫画ばっかり描いていたっていうのは、
その時にひどいことがあったからですよね。
生きて、美味いコーヒーを飲むってことだったんですね。
彼にとって正しい人生っていうのはね。


だから、鬼太郎も最後は南の島で暮らすんですけどね。


だからね、
すごく実は妖怪をやっつけるだけの話
じゃぜんぜんないんですよね。


妖怪ユートピアっていう、
人間の本来の生き方みたいなのがあって。
で、あと93才まで長生きしましたけど。
それはたぶん、
若くして死んでいった人たちの
分まで生きたんでしょうね。


それこそ、
コーヒー飲んだりタバコを吸ったり
自由にできなかった人たちのために、
思いっきり楽しんだんでしょうね。人生を。



鬼太郎、総理大臣を助ける
お礼は?



鬼太郎はね、1回ね、日本の総理大臣にたのまれて、
総理大臣を暗殺しようとしている吸血鬼を
倒したことがあるんですよ。
で、その時に総理大臣が

『君は日本の国籍を持っていないだろうから、
お礼に国籍と勲章をあげるよ』って言ったんですね。
その時に鬼太郎は『国籍も勲章もいりません。

僕にはコーヒー一杯があればいい』って言ったですよ。


だからいまごろ、水木先生はやっと戦友の方々に会えて、
妖怪にも会えて、美味しいコーヒーを
飲んでらっしゃると思いますね。


以上:町山智浩 水木しげる追悼特集からでした


この話の完全版を知りたい方は

↓こちらを参照してみてください

https://www.youtube.com/watch?v=BEt8tqwjUTg