三月の朝 Ⅵ | 碓井豊オフィシャルブログby Ameba

三月の朝 Ⅵ

〔三月の朝 Ⅵ〕


2度目の秋、いつもどおり母の病院に行く前に買い物をしていると「ゆたか!」と後ろから大声で呼ばれた。


振り返ると昔アルバイトしてた時の友達で、4つ年上のAちゃん。早くに結婚して、2人の子供と買い物に来ていた。
Aちゃんも子供も明るい顔で「ゆたか、ひさしぶり、時間あるでしょ?ちょっとお茶行こう」と強引に誘ってきて、返事をする前に、私の手を子供が引いて連れて行かれた。


席に着くとニコニコと3人で私の顔を覗き込む。「なによぉ?」って返すと、Aちゃんは子供にお小遣いを渡して、「これでゲーセン行ってきぃ。終わったらここに戻ってくるねんで。」と言って、母親の顔を見せた。


子供を見送ると、急に「ゆたか、何かあったんやろ?」と言い出した。
それまで、あまり自分の心情を明かすことを避けてきた私に、Aちゃんは直球でズカズカと足を踏み入れようとしてくる。


初めは、「何もないってーー」と交わしてたけど、あまりにしつこいAちゃんに折れてしまった。。

母の事を話すとAちゃんはゆっくりと相づちをうって聞いてくれた…


この頃、母の看病に疲れとストレスが溜まっていた私は、話しているうちに知らず知らずスーーっと胸のつっかえが取れた。きっと母親のAちゃんだから話せたんだと思う。
まるで子供ように声をあげて泣いた。
喫茶店なのに。


そして不思議と寂しさが和らいだ気がした。
ありがとうドキドキ



つづく長音記号1