9-6


「いい大学へ行っても意味なんかない。」

はっ!!!秋海棠はどきっとした。誰だ?

「おいおい、そんなことないぞ!行ってもないうちから決めるなよ。はははははは。」

なぜ笑う?

印刷室で印刷をしていたら外からこんな声が聞こえて来た。」

「だって、今いい大学出ても就職できないっていうじゃない。」

「うむぅ。それもそうだな。」

納得!?

おそらく質問に答えているのは教師だろうが、大丈夫か?

「じゃぁ、どうする?」

「・・・どうしようかな・・。」

「まぁ、そんなに焦らなくても今月中に進路を考えればいいんだからな。

焦るなよ。」

進路相談か。俺も聞いてみたいよ。この年で大学行って意味があるんですか?ってね。

「桜。お前の兄弟は優秀だったけど別に無理しなくていいんだぞ。

なにかやりたいことがあれば親に相談してみたらどうだ?」

「・・・もういい。」

あらあら。なんかがっかりして終わっちゃったよ。だれが聞いていたんだろ。

ガチャ。

げっ!教頭の秋ヲ峰じゃないか。もう少しいいアドバイスしろよな。

「お、秋海棠先生。」

先生と呼ばれるのは・・・なんか恥ずかしいけど、嬉しいな。

「今の生徒は、進路相談ですか?」

「うん。桜くんか。3年になる子です。2年のはじめまでは優秀だったんですがね。

だんだん成績が落ちてしまってね、悩んでるようですな。上の兄弟は卒業まで優秀だったんですがね。

早稲田、慶応に行きたいみたいですが・・・無理でしょうな、はっはっはっは。」

「無理かどうかは・・・わからないですよ。」

「いやぁ・・貴重な1年を無駄にするより入れるところに入った方がいいと思うんですがね。

まぁ、受験指導はほとんど塾がやってくれるんでしょうがね。」

無責任な人だな。まぁ、公立の普通の進学校ならこんなものか。おっと、もう16時半だ。

仕事は終わり。今日は模試の結果を取りにホヨヨゼミナールへ行かないと・・・。

そのあとはアサ勉先生に会わないといけない。ううう。楽しみでもあり恐ろしくもある。

9-7

境目駅の南、ホヨヨゼミナール。先月受けた模試の結果を受け取るためだ。

門から入って1階の受付へ向かう。“こうしてみるとしっている顔もあるな・・・。”

駅前にはいくつか学習塾がある。どの予備校の模試を受けるか悩んだが

まぁ1番メジャーなとこの模試にした。母体数が大きい方が参考になるからだ。

「秋海棠といいます。よろしくお願いします。」

受付の美人だけど愛想のない女性に頼んで周りを見渡した。

すると前回試験で会ったショートの髪の女の子が隣で講師らしい男と話をしていた。

「・・・納得いきません。」

“お、この声は・・・。

教頭と話していた娘だな。

この子はどこでも誰かに詰め寄っているな。“

9-8

隣で話していたのは、模試当日に4階廊下で話していた子だ。

あのときはたしか切れ長の目の男と話していたな。名前は春風 桜(はるかぜ さくら)だったな。

「はいこれ、模試の結果です。」

「あ、どうも。」

受付から模試の結果を受け取った。さて・・・。

桜の話している場所の近くにテーブルがあったのでそこに座ることにした。

今日はここでアサ勉先生と話をする。

9-9

10分ほど経っただろうか。アサ勉先生が現れた。

「お待たせしたね。」

「・・・ではこれを・・・。」

秋海棠は約束の10万の入った封筒を渡した。

「うん、確かに。」

「今日は新しい職場の四季高校に行きましたよ。」

「四季高校か・・・。懐かしいな。」

「もしかしてアサ勉先生は四季高校なんですか?」

「ふむ。まぁ、私のことはいいだろう。

勉強はどうかね。」

「模試の結果が来ましたよ。

まだ全然ですね。」

「うん。結果は早くなくてもいいからね。・・・なんか表情が重いね。どうしたんだい?」

「もう20万も払っているからやるしかないんですけど、本当にいい大学へ行って意味があるんですかね?

今日四季高校の女生徒(春風 桜のことだ。)が言ってたんですよ。いい大学でても就職は厳しい。

がっかりするだけじゃないか、って。」

「ふむ。じゃあ君は“いい大学へ行っても意味がない”、こう言うんだね。」

9-10

「ふ。」

アサ勉先生は失笑した。

つづく