仕事帰りの家路。

私は普段、イヤホンを着けて歩いている。

しかし、今日は違った。


理由は単純。忘れてしまったからだ。

退屈な家路になると、憂鬱を深いため息で吐き出す。


しかし、そこにはいつもと違った曲が確かに流れていた。


風で騒めく草木。

車の通る音。

そして、自分の足音。


思えば、自分の足音を注意して聞いた事はない。

耳を澄ませてみると、私の足音は昔と比べるとやけに重たくなった気がする。


若かりし頃の軽やかな足取りは、もうそこにはない。

明確な老いを感じた、そんな木曜日の夜。