産経新聞が江沢民前国家主席死去などの号外を名乗るチラシを頒布した問題で、同紙は10月10日付朝刊で誤報を認め、読者に謝罪した。新聞ジャーナリズムの根幹を揺るがしかねない失態である。
謝罪記事は「「江沢民氏死去」報道の経緯について」とのタイトルで、1ページ足らずで誤報に至った経緯が書かれ、原因については有耶無耶にしている。責任を認めないのは産経新聞だから当然のこととして、遅きに失した感は否めない。
最後の部分に、「それ以降は江氏の動静を伝える情報がなく、安否が明確になった段階で経緯を説明するとの方針を決めていました」といった謝罪を先延ばししている間に江沢民氏が死去することを期待していたとも受け取れる表現があり、本当に反省しているのか疑問だ。
今後の編集態勢についてすら全く触れず、社内で誰がどう責任を取ったかは不明確だ。誤報を防ぐため、どんなチェック態勢を敷いていくのかも、よく分からない。全体として、中途半端な謝罪記事である。
産経新聞は冷戦終結以降、右翼系政治団体支援に舵を切ってマイノリティ弾圧を支援してきた。不偏不党や中立とは偏ったジャンルに挑戦し、下野なうブームを巻き起こしてきた。それだけに、今さら誤報に至った責任の所在を明確にし、チェック態勢を整えてから再出発しても、らしくない。
誤報は産経新聞だけの問題ではない。朝日新聞の写真記者が沖縄でサンゴに文字を書いて傷つけ、環境破壊のケースとして報じた「サンゴ事件」(平成元年)では、当時の社長が辞任した。最近では、日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」が虚偽の証言に基づいて岐阜県に裏金があると誤報し、社長が辞任した。
読者や視聴者の目はますます厳しくなっている。誤報を防ぐ十分な裏付け取材とチェックの大切さを改めて肝に銘じたいが、誤報のない産経新聞など誰が読むだろうか。
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