節分にちなんで「鬼」にまつわる大好きな話を一つ。


山の中に、一人の赤鬼が住んでいました。

赤鬼は、人間たちと仲良くしたいと考えて、自分の家の前に、


「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます。」


と書いた立て札を立て、村人や子供たちが遊びに来てくれるのを今か今かと待っていました。

けれども、人間は赤鬼のことを疑って、誰一人遊びにきませんでした。

赤鬼は悲しみ、信用してもらえないことを悔しがり、腹を立てて立て札を引き抜いてしまいました。


そこへ、友達の青鬼が訪ねて来ました。

青鬼は、その話を聞いて、赤鬼のために次のようなことを考えてやりました。


「ボク(青鬼)が人間の村へ出かけて大暴れをする。 そこへキミ(赤鬼)が出てきて、ボクをこらしめる。 そうすれば、人間たちにもキミがやさしい鬼だということがわかるだろう。」


と言うのでした。

しかし、「それでは青鬼にすまない」、としぶる赤鬼を青鬼は、無理やり引っ張って、村へ出かけて行きました。

青鬼は迫真の演技で、悪い鬼を演じ村人たちを怖がらせることに成功しました。

そこへ「正義の味方」の赤鬼が参上します。

はじめは、遠慮がちに青鬼に絡むのですが、青鬼にこそっと


「だめだよ。もっと本気でボクを殴らないと。勘づかれるよ。」


などと言われ「ごめん青鬼くん。」と心の中で謝りながら、本気で青鬼を殴る。


青鬼は「まいった。まいった。」と退散して行きました。


計画は成功して、村人たちは、安心して赤鬼のところへ遊びにくるようになりました。

毎日、毎日、村から山へ、三人、五人と連れ立って、出かけて来ました。

こうして、赤鬼には人間の友達ができました。

赤鬼はとても喜びました。


しかし、日が経つにつれて、願いがかなって幸せな毎日を過ごしているはずだったのに,赤鬼は物足りなさに気がつくのです。


それは、あの日から訪ねて来なくなった、青鬼のことでした。


ある日、赤鬼は、青鬼の家を訪ねてみました。


青鬼の家は、戸が、かたく閉まっていました。

ふと、気がつくと、戸のわきには、貼り紙がしてありました。それにはこう書かれていました。


「赤鬼クン人間たちとはどこまでも仲良くまじめにつきあって楽しく暮らしていってください。

ボクはしばらくキミにはお目にかかりません。このままキミとつきあいを続けていけば人間はキミを疑う事がないとも限りません。

薄気味悪く思わないでもありません。

それでは誠につまらない。

そう考えてボクはこれから旅に出ることにしました。

長い長い旅になるかもしれません。

けれども、ボクはいつでもキミを忘れますまい。

どこかでまた会う日があるかもしれません。

サヨウナラ、キミ、からだを大事にしてください。


ドコマデモ キミノ トモダチ アオオニ」



赤鬼は、だまってそれを読みました。二ども、三ども読みました。




初めてこの話を読んだのは小学校のときだったかな。


普通に泣いてしまったのを覚えている。大人になった今でも、泣いてしまうことがある。


何となく自分の生き方をちょっと見失ったとき、この話を思い出してもう一度頑張ってみようって思う。


見返りを求めずに相手の幸せのために尽くすことはなかなか難しい。


でも、やっぱり自分のしたことで周りが幸せになっているのを見ると、素直にうれしいものだ。


だからこそ、少しくらい痛くたって、誰かのために頑張れる「青鬼」のように生きていたい。