銀行融資を受ける上で、重要なファクターの一つは「銀行担当者」であるとお話しした事があります。
街の不動産屋でもバンカー並みの知識を持った僕から
今日は来春入行予定の新卒者に融資案件1000を超えるファイナンス経験から学んだ「バンカーの心得」をお伝えしたいと思います。
ご縁があればいつか当社の担当になるかもしれないので、共に夢を語り合える協力者となっていただけるよう僕らのファイナンスに対するスタンスをシェアしたいと思います。
まず、入行して初めは店内業務を覚えることになります。
店内業務を覚えてから3年もすれば、外回りの渉外に移ります。
渉外とはクライアント先から案件を持ってくる営業の事を指します。
クライアント先から案件をいただく事が出来たら、融資案件の組み立てに入ります。
銀行融資に取り組む上で、まずとても大切な点は、
銀行の成り立ちです。
銀行とは元々地域の人たちから預金を集め、その資金で地域の事業者に貸し出し地域経済発展の為、地域と共に歩んできました。
地域から預かった大切なお金ですから、貸し出す上で金額の大小問いません。
1万円であろうと1億円であろうと地域の方々の大切な大切なお金なんです。
この意識を持つことで、貸す側もお金の大切さを感じるでしょうし、借りる側も「銀行からお金を借りた」という意識ではなく、「地域から応援されている」とパラダイムシフトします。
地域社会の為に地域社会と共に歩んできた歴史から地域を応援するのが銀行の成り立ちです。
まずはバンカーマインドを土台に据えましょう。
2点目に貸出先の目的(PURPOSE)と展望(VISION)と覚悟(DETERMINED)です。
PURPOSE:何のために融資を受けるのか?
VISION:融資を受けて将来どうなりたいのか?
DETERMINED:ナゼ融資を受けてまでやるのか?
融資とは「資本が滞りなく通る(流通する)」と書きます。
ビジネスの上で成功するか否かは「どれだけ思いが強いか」がとても大切です。何故なら地域から応援されて融資を受けた以上、「絶対に失敗で終わらせない」という心意気が重要だからです。
大切な資本を滞らせることなく流通させるには貸出先の資金目的(PURPOSE)と展望(VISION)と覚悟(DETERMINED)が明確か否か、地域の代表として応援したいかどうかが重要です。
目的(PURPOSE)と展望(VISION)と覚悟(DETERMINED)の3つを、社長の想い(MIND)と仮に一言で表すとしたら、
MINDのある社長であればちょっとやそっとではくじけたりしない。
会社が上手く立ち行かなくなり他行が一斉に資金の引き上げに入ったとしても、そんな時こそ社長と膝を交えて話をして下さい。
「雨の日に傘を貸さない」という言葉を聞いたことがあると思いますが、この言葉こそ行員にとって屈辱的な言葉はありません。
人は誰でも困っている人を助けたいと思う気持ちは一緒です。銀行だから自分の事しか考えていないなんて大間違い。
だからこそ銀行員になられる皆さんは決してそんな言葉は使わないで下さい。
貸したいと思っても貸せなかったクライアント先がそう比喩する訳で、そこには「貸す側」と「借りる側」の問題があります。
貸す側にとっては、前述の「銀行の成り立ち」を踏まえているか
借りる側にとっては、くじけない強いMINDがあるかどうかです。
社長のMINDを膝を交えて聞いて下さい。銀行員の仕事は社長のMINDを感じ取れるかどうかです。
「応援する」を行動で示すことです。
単なる一時的な数字だけで他行が一斉に引き上げに入っても、当行だけは最後まで引き上げず、ここで上記の仕事ができれば、仮に融資実行できなかったとしてもメインバンクが取れるはずです。
頼りになるとはこういう事を指します。
それでは
3点目に大切な要素は事業計画です。
どんな想いが強くても地域のお金を取り扱う以上、感情論だけで実行は出来ません。
綿密な計画があるか否か。
不動産融資(収益物件)について例えてみます。
まず不動産融資(収益物件)は他の融資に比べて出しやすい融資です。
運転資金や設備投資と違って、不動産担保が取れるからです。
不動産担保で保全できたとしても、最も重要な要素は、返済していけるかどうか。
売上から必要経費、支払利息と減価償却を引いて税前からTAXを引いた税引き後キャッシュフローと減価償却を足した額で元金の返済バランスを確認します。
何年で返済するのか償還年数でキャッシュアウトの可能性が変わります。
財務指標の1つでもある債務償還年数ですが、収益物件の場合20年以内が基本です。
キャッシュアウトの可能性は償還年数だけでなく、金利上昇によっても考えられます。
DSCRを算出する上で、金利が上昇した場合と入居が落ちた場合のマトリクスを作り、どこまで耐えられるのか二軸でストレスチェックを行います。
収益物件は通常2年の賃貸借ですから翌月の売上が見込める。
金融庁の金融検査マニュアルには、「収益物件の査定は原則、収益還元法による評価とし、必要に応じて、原価法による評価、取引事例比較法による評価を加えて行うこと」と定められています。
本当に社長のビジョンを応援したいと思えば、本部がガラパゴス的な「担保評価フルカバー」と言ってきても理論武装して反論する事ができるはずです。
本部の職員といえども金融工学や経営工学を学んだ人達の集まりでは決してありません。ちょっと本気で集中して学べば勝てるはずなのに、本部に怒られるのが嫌と感じるならバンカー資質どころか、残念ながらあなたの人生はそこまで「はい終了」と断言できます。出世の道は完全に途絶えます。
企業にとって最も重要な事は「顧客ニーズに沿う事」であり、将来期待できる職員とは「信念を持って本質を見極められる力」であります。なぜなら上長の指示が100%正論と誰が証明・保証できるのですか?
上長が間違っているかもしれないし、将来銀行の役員となり数百人を乗せた船の舵取りをする事になった場合、求められる力とは「黒を白と部下に伝える力」では無いという事です。
本質に目を向けないとこれからの時代は生き残れません。
もし本部に怒鳴られる事があるとすればそれはあなたが優勢な証拠です。
更に切り口を広げて理論闘争していきましょう。
バンカーとは財務のプロフェッショナルですから、日々自己研鑽によって社長にアドバイス出来るようになって下さい。
4点目は、エビデンスです。
自分の目で現場を確認し、立てられた事業計画の根拠を取ります。
購入物件は近隣相場と比べどうなのか?
近隣の入居状況はどうなのか?
再生計画(満室計画)は実績があるのか?
投下資本はあるのか?
収益財源の確認
二次財源の評価
直近三年の所得推移
与信チェック
鑑定評価
5点目にようやく案件組み立てです。
上記の事前準備が整えば、書面でまとめ上げます。
初めは店内のメンバーが敵だと思って組み立てして下さい。
目の前の敵を説得できずして本部を説得できるわけがありません。
例えるとオセロで自分の味方を増やしていく感じです。
本部は社長に会わずして審査するわけですから、銀行担当者がどれだけ社長に寄り添って理解しているかが重要な要素なわけです。
案件組み立ての際に他人を説得するポイントは「ロジカル」です。
感情論でなく、論理的思考=ロジカルシンキングのみが他人を説得します。
本部からグウの音も出ない組み立てにするには、先回りした理論武装「下調べの量」です。
仮に下調べによって「この案件は社長を苦しめる。」と思えば全力で止めに入るべきでしょうし、その際も根拠を明示してロジカルに説明すれば社長も理解してくれるはずです。
最後になりますが、融資案件は銀行担当者の「努力の量」と言い換えられるのではないでしょうか。
社長は人生を賭けて事業を行っている訳ですから、寄り添うバンカーも重みを共有して仕事に向かって下さい。
<まとめ>
1、バンカーのマインド
2、クライアントの目的・展望・覚悟
3、事業計画
4、エビデンス
5、組み立てはロジカルシンキング
PS-当社は担当バンカーに恵まれ、上記のノウハウは全て過去のバンカーに教えられてきた事です。
「御社の社運を賭けるこの案件が通せなかったら私はバンカーを辞める」と言い切って前例の無い案件を持ち上げてくれたバンカーも居ました。
中間管理職の人で何の決裁権も無いのに「私がイケると思ったものは必ず通してきたし、この案件もイケるから99%安心して下さい。」と言い切った人たちもいました。
クライアントに未確定要素を伝えるが良いか否かは別として、自分が応援するとコミットした案件は必ず通す!これが一流バンカーの仕事でしょう。
今の当社があるのも全て過去のバンカーのお陰様です。
僕が教えられたように、今度は僕が若い人達に教えていく。
それが使命だと思っています。
バンカーになられる皆さん、誇りを持って仕事をして下さい。
僕が感動を覚えるように、クライアントの人生を良くも悪くも左右するとても責任重くやりがいのある仕事ですから。

