今期取っているPatentの授業は、先期のIPと同じ先生ながら、さすがに議論が高度になっている気がします。といっても、最初の数回は「特許とはなんぞや」みたいなこともやったりして、ちょっと前の宿題は「特許のclaim(請求項)を書いてくること」というものでした(claimとは、おおざっぱに言うと発明した技術を言葉で書いたもので、その範囲で特許権者に権利が与えられるので非常に大事なものです)。もっとも、ただ書くだけではおもしろくないので、prior art(先行技術)として4つの既存特許があげられ、「これらを回避して書くように」との指示つき。なので、まずはその4つの特許を読まなければいけないのですが、一字一句読んでるヒマはないので、必殺図面頼りの流し読み。会社でのやっつけ仕事テクがこんなところで役に立つとは、なんだかフクザツです。。。
今回のお題は、スタバなどで使っている紙のコーヒーカップを、いかにして手で持って熱くないようにするか。なにしろこの国ではコーヒーが熱いとPL訴訟で懲罰的損害賠償を命じられたりする
ので、知財的にもホットな技術分野?なのです。
今回出願するのは、Sorensenさんの発明した5425497特許(の発明)で、特許公報の最初の数ページ(もちろんclaimは含まれてない)が渡され、そこから技術内容を読み取ります。フムフム。両端に切れ込みの入ったバンドを巻くわけね。
prior artのひとつめは、発明者Seipelさんの2028566特許。外側がじゃばら式のバンドを巻くタイプのようです。1934年出願とありますから、アメリカ人は世界恐慌から立ち直ろうと必死にニューディール政策を推進する一方で、コーヒーの熱さにも悩んでいたわけですね。
続いては、発明者Millerさんの3123273特許。これはバンドじゃなくてカップ自体にでこぼこをつけるものだから、だいぶ違うような気がするが。。。この複雑な造形は、プラスチックとかじゃないとムリですよね。これを低コストで生産するというあたりに、世界ナンバーワンだった60年代のアメリカ産業界の実力を垣間見る思いです。でも、握ったら痛そう。。。
時代はぐっと新しくなって、1992年出願の発明者Coffinさんの5205473特許。これはぱっと見566特許に近いですが、容器とホルダーの両方がクレイムされているようです。全編を通じてポリスチレン容器より環境にやさしいということが強調されてるのが、90年代ぽい。
最後は、発明者Noonさんの4685583特許。1993年の出願です。う~ん、これは。。。両端に切れ込みが入ってて一見497特許と似てるけど、バンドを握るんではなくて、取っ手を持つから熱くない、ということかな。
こうしてみると、497特許は図3のように使用前は完全にフラットになってスッキリ片づけられる、というところがいちばんのウリのようです(ほかにも握りやすいだとか、表面に印刷しやすいだとか、いろいろ書いてあるが)。
というわけで、とりあえずなんとか書いてみましたが、われながら笑っちゃうような代物ができました。ふだん仕事でご一緒させていただいてる社内外のベテラン特許屋さんたちを、あらためて尊敬する瞬間。私は会社では出願業務にはいっさいかかわってないのですが、この分では今後とも知財部門からお呼びがかかることはないでしょう。。。