「世界の」という枕詞が失礼なほど現代クラシック界を代表する指揮者、セイジオザワ。その彼がボストンに帰ってくる!というので、ボストンの耳の肥えたクラシックファンの間では、このサンクスギビングの一番の話題となっていました。
BSOも、懐かしい映像を集めた動画 を作成するほどの力の入れよう。Bone教授も2日目土曜日にいらっしゃるとのことでしたが、私は初日金曜日のマチネに行ってきました。


開演とともにステージに出てきた氏は、私が20年以上勝手に想像していたよりずっと小柄でした。満席の聴衆はいきなりスタンディングで、温かい拍手とともに迎えました。
今夜のプログラムは、メシアンとベルリオーズの幻想交響曲(メシアンは"Trois Petites Liturgies de la Presence divine"という曲だが日本語でなんて言ったらいいかわからない。オンドマルトノ使うやつ)。メシアンは、最初少し散漫な気がしましたが、後半に進むにつれよくなってきました。珍しい楽器編成と合唱も、高いレベルでアンサンブルが取れていたと思います。しかし、客席の盛り上がりはイマひとつ。まぁ、これは曲が曲だけに、というところでしょう。
ベルリオーズは、全編を通して散りばめられる不安の旋律よりもロマンチックな「幻想」の方向に振ったように感じました。この曲は、ベルリオーズがアイルランドの女優に捧げた曲ゆえ、こういう方向に振るのもぜんぜんアリかとは思います。ただ、個人的には張りつめたような緊張感のある演奏が好みなので、いくらかもの足りない感も残りました。かつて氏が(だったと思うが、バーンスタインがだったかも)ご老人の多いマチネではすこ~しテンポを下げるとか言っていたように記憶しているのですが、そういうのもあったかもしれません。ただ、フィナーレは、たたみかけるオザワ節を聴かしてくれました。


しかしながら、正直に言うとこの日の演奏は指揮者とオケがかみあっていないというか、なんだかチグハグな感じがしました。2日目に行った妻はよかったと言っていたので、これは初日だけのことだったようです。この演奏者の顔ぶれでは、普通によい演奏ではなくて、極めて素晴らしい演奏をどうしたって期待してしまうので、難しいところです。


というわけで、今回は前回のマーラーほどの深い感動は残念ながらなかったのですが、氏とBSOの名誉のために記しておくと、今回は私の席が悪すぎたということも大きく感想に影響していると思われます。
今回なんとか入手できたのは1階の後ろの端で2階席がかかっている席だったのですが、ヘッドホンを片方外して聞いてるような、あるいは隣の部屋で演奏しているような、びっくりするくらいのバランスの悪さでした。これだったら、最前列のほうがまだよかったと思います。ボストンシンフォニーホールの後ろの端の席は、いけません。昔ながらの真四角なホールは音響の落差が激しいというのを、すっかり忘れていました。
バックパッカー時代の癖でつい安いチケットに手が伸びてしまったのですが、いいトシをしてたかだか数十ドルをケチってはいかんと、深く反省。