全世界的にそろそろ年末というわけで、日本では恒例の警察24時系の特番でみのさんがもったいたっぷりに前フリをする時期かと思いますが(←けっこう好きだった)、今日のCivil Procedureの宿題(のひとつ)だったビデオ を見て、やっぱアメリカの警察ってスゲー、と思いました。


この逃亡していた人物は四肢麻痺?("quadriplegic"とある)の大ケガをし、その後追突した警察官を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしています。事件は、2007年に連邦最高裁が被告(警察官)勝訴のサマリージャッジメント(訴訟の結論が明らかであるときに正式な事実審理なしに下される判決)を下しており(Scott v. Harris, 550 U.S. 372)、ちょうど今Civil Procedureの授業では、(連邦民事訴訟規則56(c)条のもとで)サマリージャッジメントを与えるにあたり当事者はどの程度の証拠を提出し裁判所はそれをどのように評価すべきか、というテーマを(例によってえんえんと)議論していたので、取り上げられたわけです。


「被告(警察官)勝訴」というのは、警察官が職務上行った行為であったためqualified immunity(日本の国賠法1条2項だっけ?と近い趣旨と思われます)という法理が適用されたことによるものです。このqualified immunityを巡っては憲法的にも原告の権利侵害を先に判断すべきとかおもしろい論点があるようですが(そしてそれがサマリージャッジメントの論点にも微妙に影響してくるようではあるのですが)、民訴法的には(というかここでは)、サマリージャッジメントの段階でみんなでこのビデオを見てあれはしょうがなかったよねうんうんとかって判断するのってどうなの?ということが問題となっています。実際、下級審ではビデオの証拠力も含めて陪審が判断すべきとして被告によるサマリージャッジメントの申し立ては退けられているのですが、スカーリア判事の法廷意見は、"There are no allegations or indications that this videotape was doctored or altered in any way, nor any contention that what it depicts differs from what actually happened."としたうえで、"what we see on the video more closely resembles a Hollywood-style car chase of the most frightening sort"であって、"no reasonable jury could conclude otherwise."と言いきっています(このビデオによらずに原告の主張するとおりの事実を認定した下級審を、「下級審の認定した事実によれば、原告は"rather than fleeing from police, was attempting to pass his driving test"のようだ」と皮肉っている)。


ま、アメリカで警察に追われたら、逃げないほうがいい、ということですね。