3年くらい前だったと思いますが、ちょうどF1アメリカGPのウィークエンドに出張で来ていて、ホテルの100近いチャンネルのどこでもF1をやってなくて、おおいに落胆したものでした(今もそうだが、アメリカのふつうのチャンネルはNASCARとドラッグレースばっかり)。

時は流れ、F1アメリカGPはなくなり、来年はカナダまでカレンダーから外れるということで、北米はほんとうにF1不毛の地になってしまいました。
対照的に、MotoGPは今年からアメリカで2戦開催されており、来年もこれが基本的には継続されるようです。
この違いはなんなんでしょうか。


[わかりやすさ]


アメリカでうけるスポーツ(i.e. ショービジネス)の条件として、わかりやすいということがよくあげられます。たしかに、アメリカ人の好むオーバルのレースは、わかりやすさが身上です。
現代F1は極めてテクニカルになっているのは、事実です。しかし、MotoGPも、ピットストップこそないものの、あれでなかなかかけひきのあるスポーツでして(競輪と似ている、のかな?よく知らないけど)、高度な戦術が要求されます。したがって、この点は決定的な要素とは思われません。


[パワー]


物理的なパワーはもちろんF1のほうが上ですが、MotoGPマシンもウィリーとかバーンアウトとかで見た目のパワー感はあります。

それよりも、MotoGpのほうが見るからに肉体を使っているので、その点がアメリカ人好みなのかもしれません。F1の、オートマチックだとかトラクションコントロールだとか(もうないけど)をあやつるさまは、スポーツマンというよりオペレーターという感じがしないでもないですからね。

アメリカ著作権法の議論に"sweat of the brow"(額に汗)というのがありますが(トレードシークレットにも似たような議論がある)、アメリカ人は力いっぱいがんばってる感じが大好きなんだと思います。


[政治]

ちなみに、今のF1のおおきな問題のひとつである、過度の政治化は、ここアメリカにおいてはそんなに問題じゃないように思います。
近年のインディーカーの政治的な争いも醜いものでしたが、これが魅力を損なう原因というようには、あまり言われてないようです。
私の見たところ、むしろアメリカ人は政治は大好きです(笑)。


[フェアな競争]


最大の理由は、ここ数年のMotoGPはチームの差、マシンの差がF1ほどではない、ということではないでしょうか。
ここが、アメリカ人の大好きなフェアな競争という概念に訴えるのだと思います。

ヨーロッパや日本のメーカーが中心なのは同じですが、アメリカ人ライダーもいっぱい活躍しているし、オープンな市場、という感じがするのでしょう。


といったところでしょうか。

モータースポーツの世界ではどのカテゴリーをとってもアメリカ独自ものばかりであることからすると、アメリカ人は他の国に合わせることがあまり好きじゃないのかもしれませんね。

特許法のように、徐々に国際的に調和していってくれるとよいのですが。