昨日レポートを提出して緊張が緩んだか今日は体調が思わしくなく、早めに帰宅して「ルポ貧困大国アメリカ」(堤未果/岩波新書)を読みました。余談ですが、先日日本のアマゾンで気の向くままにいろいろ注文した(この本もそのうちの一冊)ところ5万円以上になってしまい、あまり便利なのも考えものだと思った次第です。


さて、この本は、想像していたよりも深い内容でした。
この本が指摘する貧困拡大の原因のひとつに福祉などの政府機能(公共サービス)の民営化がありますが、著者が取材した事例の数々を読むと、なるほど民間企業は無駄は省く代わりに利益を上乗せするのだというあたりまえのことを、あらためて気づかせてくれます。
しかしそれよりも、(この本の趣旨からは若干ずれるような気もしますが)イラク戦争に無理やり引きこまれるアメリカ人・外国人派遣労働者の実態には、戦慄を覚えました。軍産複合体という概念にスポットライトをあてたのはたしかアイゼンハワーだったでしょうか。約半世紀を経て形成された、その究極の進化形を垣間見た思いです。


そういえば、ロースクール生向けの雑誌にも、毎号軍の法律家を募集する広告が載っています。学費がきわめて高額なロースクールでは必然的に富裕層の子弟が多く、ともすればこの国に根深く横たわる貧困の現実を忘れそうになりますが、実は莫大な教育ローンを背負って入学してきた学生も少なくありません(少し前のレポートの課題が教育ローン債務について原則免責を認めない連邦破産法523(a)(8)条の例外についてだったのは、なにかのメッセージ?)。その教育ローンの話も、この本に登場します。


著者は、ニューヨークで国際関係論を学び、現在もニューヨークと東京を行き来してジャーナリスト活動をされているそうです。真実のアメリカ社会を掘り下げるよう、次作にも期待したいです。