今週から契約法の授業に出て"Why?"の洪水に圧倒されていますが、藁にもすがる思いで、アメリカ法ベーシックスのシリーズの中でも一番広く読まれていると思われる「アメリカ契約法」(樋口範雄/弘文堂)をいまさらながらですが読みました。
この本は、90年代以降に日本で法学教育を受けた方にわかる表現で言うとすれば、アメリカ法版の内田民法ですね(実際に著者と内田教授との親交を感じさせる記述もあります)。アメリカ契約法の超基本的なポイントについて、アメリカのロースクールのスタイルでまず判例を紹介し、そこからルールを導き出し、しかも日本法との対比もしてくれているという、なんともありがたい本です。
個々のルールの解説は経済的見地からその合理性を説くものが多く、この分野における法と経済学の興盛を感じさせますが、著者の識見はアメリカ社会の文化的な考察にも及んでおり(第12章の「未成年者の契約」など)、単純に読み物としてもおもしろいです。
また、損害賠償の中身についての整理などは、実務的にもたいへん有益ではないかと思います(私は目からウロコでした)。
平易簡明を追求したせいか判例の事実関係がわかりにくいところも少しありましたが、いたしかたのないところでしょう(興味があれば調べればよいことですし)。
契約法をとるLLM生には必読の書と言っても、過言ではありますまい。