実はけっこう前に読み終わっていたのですが、ここに書かないままになっていました。
この「アメリカン・ロイヤーの誕生」(阿川尚之/中公新書)は、「ジョージタウン・ロー・スクール留学記」という副題が示すとおり、1981年にジョージタウンのJDに入学した著者が、晴れてニューヨークバーの宣誓式に出席するまでをつづったドキュメンタリーです。著者は、入学前はソニーで通商問題を担当していたということで、企業出身留学生として大先輩ということになります。
個性的な教授たちの話、日本へ帰ることを覚悟したという試験の話など、学内での話もおもしろかったのですが、中でも私が興味をひかれたのは、サマーアソシエートの話でした。
LLMでは夏が来る前に終わってしまうのでサマーアソシエートというのはありませんが、JDでは夏休みに弁護士事務所などで実習をするのが通例で、これをサマーアソシエートと呼んでいます(日本の法科大学院ふうに言えばエクスターンでしょうか)。これは弁護士事務所の側にとっても重要なリクルーティングの場となっているようです。有名校の成績優秀者ともなれば下へも置かぬ扱いをされ、そうでない人はちょっと前の日本の就職氷河期の学生のような苦労をするようで、階級社会アメリカの一面が垣間見れます。
著者は、ワシントンDCのアーノルド・ポーターとニューヨークのサリバン・クロムウェルでサマーアソシエートを経験したそうですが(すごい!)、この2つの有名ローファームの「社風」の違いの話が、特におもしろく感じました。
なるほど、こういうのは経験しなければわかりませんね。