前の記事(趣味の印紙税2 覚書に印紙は必要なの?)を見て、「申込書(注文書)は契約の成立を証明するものじゃないから、要らないんでしょ?」と思ったアナタ、センスありますよー!!法務に来ませんか?!メールと電話と書類のノンストップDoJミックスが待ってますよー!!!
そうです。基本通達14条には「「契約」とは、互いに対立する2個以上の意思表示の合致、すなわち一方の申込みと他方の承諾によって成立する法律行為をいう」と書いてありますが、要は、「売ります」(「あげます」でも、「貸します」でもよいが)という申込に対して、「買います」という承諾があって、当事者の意思が一致すれば、そこで初めて契約が成立します。申込(注文)だけではまだ契約は成立していませんので、たとえ書面にしたとしてもそれは契約書ではありません。


しかし、ここに、わりと見落されている重大な落とし穴があります。
基本通達21条に、「申込書等と表示された文書の取扱い」と題する規定があり、1項の「契約は、申込みと当該申込みに対する承諾によって成立するのであるから、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される単なる申込文書は契約書には該当しないが、申込書、注文書、依頼書等(次項において「申込書等」という。)と表示された文書であっても、相手方の申込みに対する承諾事実を証明する目的で作成されるものは、契約書に該当する。」というのは、ふんふんそうだよねというカンジなのですが、2項1号(2号と3号は1項と同じような話)で、「申込書等と表示された文書のうち、次に掲げるものは、原則として契約書に該当するものとする。(1) 契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。」とされているのです。
商品の継続的な販売の基本契約書などには、「申込書の受領から3営業日以内に別段の通知がないときは、契約は成立したものとみなす。」などと書いてあることが、よくあります。この場合には、申込書(注文書)であっても印紙が必要になります。


そして、ここからがマニアックな印紙税研究の真骨頂なのですが、①申込書(注文書)は契約の成立を証明するものではないから印紙不用という原則に対する、②申込書(注文書)だけで自動的に契約が成立する場合は印紙必要という例外には、さらに③受注した側が注文請書などを作成することになっている場合には(申込書(注文書)には)印紙不用という例外があります。正確には、先ほどの基本通達21条2項1号の続きに、「ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。」と規定されているのです。これは、注文請書を作成する場合には、これに印紙が必要になるからです。
注意していただきたいのは、注文請書を作成した場合ではなく、あくまで作成することになっている場合「作成することが記載されている」場合)だということです。この点から、「いちおう注文請書を作成すると書いておいて、実際には作成しなければ印紙は貼らなくて済むのではないか?」とはだれもが考えることですが(考えないか?)、これは、受注した側が常に契約違反になるという問題はさておくとしても、脱法行為ですので、よい子のみなさんはマネしないほうがよいでしょう。


※この記事は、あくまで筆者の趣味で書いているものであり、完全なる筆者の私見です。印紙税に関する判断は、書面上の細かい記載に左右されることもしばしばあり、正直言って書面を見て(かつ話を聞いて)みないとわからないというのが、筆者の経験上の率直な感想です。だからといって、ホンモノの契約書を送られても困りますので、具体的な書面についての印紙の要否等は、税務署、税理士等の専門家にお問合せください。また、筆者は日々撮りためたF1ビデオの鑑賞、手持ちCDのiTunesへの取り込み、ゲキレンジャーに退治される怪獣の役等に追われており、議論、論争等を行える状況にありません。もとよりこの記事の内容は完璧ではないものとは思いますが、得心のいかない場合はそっと胸の中にしまいこみ、間違いを発見した場合はあとでコッソリ教えてください(笑)