みなさま、こんにちは。

今日は腹膜透析に関するお話をしようと思います。

腹膜透析は小児の腎代替療法の中では最も多い治療法で、透析療法の90%程度は腹膜透析で行われています。

腹膜透析という治療法は、名前の通り、腹膜を利用して透析をする方法で、お腹に留置したカテーテルから透析液を注入し、不要な物質や水分が血液から腹膜を通して透析液の中に排出され、それをお腹のそとに回収してくる、という方法です。

透析液をお腹の中に入れるため、カテーテルを留置する手術が必要になります。

この治療法の利点は、新生児から行うことが可能で、多くは専用の機械を使って行うのですが、自宅で行うことが可能であるという点です。

血液透析と異なる点は、毎日数時間(通学中の子は多くは寝ている間に)かけて透析液を何回か機械で出し入れして行う、ということです。毎日少しずつ行うことで、体への負担は少ない反面、透析の効果が腹膜の機能に依存するので、十分水分や毒素が出しきれないことも起こり得ます。

また、血液透析のシャントやカテーテルでも感染や狭窄によるトラブルで再手術、となることはありますが、腹膜透析もカテーテルのトラブル(詰まる、感染する、など)で入院し抗生物質による治療を行ったり、場合によっては入れ替え手術を行う必要が出ることもあります。

また、透析による治療法の場合、血液透析であっても、腹膜透析であっても、腎臓の働きを全て代用してくれるわけではない、ということに注意が必要です。

貧血や高血圧、カルシウムやリンの異常などには薬による治療が必要なこともあります。体が酸性化していると重曹というシュワシュワした薬も飲まないといけないこともあります。子供の場合、成長障害に対して、成長ホルモンを毎日打つことなどもあります。

それから、旅行にいく場合にも血液透析であれば旅行先の透析病院にお願いして旅行透析を行ったり、腹膜透析であれば機械を運んで(多くは業者さんが対応してくれると思いますが)、旅行先でも透析をしなければならない、ということは不都合な点かと思います。

 

先日、19例目の6歳未満小児からの脳死下臓器提供のニュースがありました。

1997年、臓器移植法が制定された当時は15歳未満小児からの臓器提供は認められていませんでした。

2009年に改正臓器移植法が成立し、15歳未満小児脳死患者からの臓器提供も認められるようになりました。

ただ、現実には2017年くらいまでは小児(18歳未満)の脳死ドナーは年2−3例で、多くても5例くらいでした。ところが、最近少しずつ増加し、2019年は約20例の小児からの提供がありました。

近年、少しずつこのようなニュースが見られるようになってきたのは、2016年、2018年にレシピエント(移植待機者)の選択基準が改定され、小児ドナーからの臓器提供が小児待機者に優先されるようになったことが大きいと考えられます。それまでは小児ドナーであっても圧倒的に高齢の待機者が多く、待機時間が長くなると優先されるためにお子さんの臓器が高齢者に提供される、ということが非常に多かったのです。その状況が変わったことで、大切なお子さんの死は受け入れがたいけれども、病気で苦しむ他のお子さんの体の中で生きていく、ということに微かな希望を見出すご遺族が増えたのではないかと考えています。

移植に携わる医療者や、病気で移植を待つご家族にとっては好意的なニュースではありますが、日本においては、移植に携わる医療者や移植を待つご家族が好意的に発信しにくい環境があります。移植に携わる人間は臓器狩り、のように見られる方もいらっしゃいます。

死生感というのは人それぞれであり、脳死をヒトの死と認められない方や和田心臓移植をはじめとする日本の移植医療に対する根強い不信感、というのはいまだあります。そのため、日本の腎臓移植医療においては毎年移植の約90%が生体腎移植に頼らざるを得ない現状があります。

医療者である私は、脳死の経過を想像ができることもあり、自分のこどもが脳死という事態になれば提供を考えると思いますし、医療者でないご家族でもそのように考えておられる人はいらっしゃると思います。でも、ある日突然自分の家族が脳死という事態になったときに、その考えを改めないか、私自身それはわかりません。自分がそう考えていても家族の反対があるかもしれません。もちろん、提供が是だとも考えていません。絶対に提供しないという考えも間違いではありません。ただ、突然起こる事態に備えて、このようなニュースに触れるたびに少しだけでも想像したり、考えてみていただければと思います。

みなさま、こんにちは。

前回、腎代替療法(じんだいたいりょうほう)について書きましたが、今回から具体的な腎代替療法に関してのお話をしていこうと思います。

今回は小児の腎代替療法としては一番頻度の低い、血液透析についてお話します。

血液透析というのは、簡単に言うと、体から血液を抜いて、血液から余分な水分・毒素などを取り除いて、きれいにした血液を体に戻す、という治療法です。

なぜ小児の腎臓病で血液透析を選択されることが少ないかは、いくつかの理由があります。

一つは、体から血液を抜く、ということが大人に比べて簡単ではない、という事情です。血液透析を行う場合、小さな子では1分間に50ml程度、大きな子や大人では1分間に200-300mlの速度で体から血液を抜く必要があります。このくらいの速度で血液を抜くためには、普通の血管に細い針を刺したくらいでは抜くことができません。大人の場合、血液を速い速度で抜くために腕の動脈と静脈を短絡させる手術(シャント手術)を行います。動脈と静脈を短絡させることで動脈の血液が指先などの毛細血管を通ることなく静脈に流れることで、静脈に圧の高い動脈血が注ぎ込んで静脈が太くなり、1分間に200-300mlくらいの血液を抜くことが可能になります。

しかし、体格の小さな子供ではシャントを作成しても十分静脈の拡張が得られないことも多く、シャントとしての機能を果たさないことも多いので、どうしても血液透析しか選択肢がない場合には首などから太いカテーテルを心臓の近くにまで入れてそのカテーテルから血液を抜くことが必要になります。カテーテル管理は閉塞や感染などの問題もあるので多くは入院して行う、ということが必要になり、長期に行うことは非常に困難です。

また、大人の血液透析は、週3日程度、透析のできる病院(クリニックなど)に通院し、3-4時間程度拘束されます。子供でこれを行おうとすると学校生活などに当然影響が出てしまいます。

また、血液透析は数時間で余分な水分を一気に抜くため、大人に比べ全身の血液量が少ない子供の場合、全身の循環に影響が出て、体に負担がかかりやすい、ことも問題となります。

さらに、毎日透析をしないということは、透析をしない日に水分や毒素が溜まりやすく、そういったことを防ぐために水分や食事の制限をしないといけないことなども子供にとっては成長などの点において不利益となります。

そのほかにも様々な合併症もあり、以上のような事情から、子供で血液透析が選択されるというのはかなり限られた場合になると思います。