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うしずのです。

今回はビートたけしさんの小説「アナログ」の感想を書かせて頂きます。

この本が発表された当初に、たけしさんはこう言いました。「初めて自分で書いた」と・・・。

私は、たけしさんのその言葉を聞いた時、ショックで耳が聞こえなくなってしまいました。

なぜなら私は「漫才病棟」という小説が大好きだからです。漫才師の青年を主人公にした笑いと感動の小説です。

その「漫才病棟」の著者はビートたけしとなっています。でも「アナログ」が初めて自分で書いた小説と言うことは、まさか「漫才病棟」はゴーストライターに書かせたのでしょうか？

それでは耳が聞こえているのに聞こえていないふりをして現代のベートーベンを名乗っていた、あのペテン師と同じではありませんか。

たけしさんは、あの人の事をさんざん馬鹿にし、ネタにしていたのに同じ様な事をやっていたなんて。私は精神的に混乱してしまいました。

そして、その精神の混乱を元に、曲の設計図を書き、誰かに作曲してもらおうと思ったのですが、優秀なゴーストライターが見つからなかったのでやめておきました。

って、私も同じ様な事しようとしてるじゃねーか。たけしさんを批判できる立場じゃないってーの。ジャンジャン。

すみませんでした。たけしさんのエッセイのパロディーをやってみました。あらすじの後、ちゃんと感想を書きます。

「アナログ」ビートたけし著　集英社文庫　

あらすじ
建築デザイナーの水島悟は、自分が内装のデザインを手掛けた喫茶店「ピアノ」で謎めいた美女みゆきと出会います。やがて意気投合した二人は毎週木曜日に「ピアノ」で会う約束を交わします。しかし、ある日を境にみゆきは店に現れなくなり・・・・・。

まず思ったのはですね、この主人公やたら働くなという事です。好きな女性に会うためにという目的があるにせよ徹夜も厭わず仕事をするなんて令和の若者としては超異端だと思いますよ。

たぶんですけど、たけしさんは絵を描いたり、数学の問題を解いたりしていたら寝るのを忘れたなんて仰られていたので徹夜など余裕という感覚なのでしょう。たけしさんなりの普通が出たんだと思います。私からすると超人レベルですけど。

ヒロインのみゆきは生身の人間というよりは理想を反映したキャラクターです。

又吉直樹さんの「劇場」という小説を読んだ時も思ったのですが、理想の女性像を描く際に、なぜ何役も背負わせるのでしょう？

「劇場」のヒロインも「アナログ」のみゆきも恋人、母親、心理カウンセラー、オタク仲間と何役も役割を負わされて、理想とはいえ求め過ぎではないかと思ってしまいました。

主人公は最後には求めるだけでなく、惜しげなく愛を与えます。この作品は愛しかたの理想を描いた小説で、関係性を描いた小説では無いのかも知れません。悟とみゆきとのコミュニケーションに、衝突やすれ違いが皆無と言っていいので、そう感じました。

ちょくちょく漫才、コント、亀有ブラザーズの様な場面が入ります。常にお笑いのネタを考えている、たけしさんのクセなのか、それとも照れ隠しなのでしょうか？

言葉の端々に、たけしさん独特の毒のある視点が入り込んでいます。下品なギャグや馬鹿馬鹿しい会話でも、隠しきれない純粋さや優しさが感じられます。

これはビートたけしという人にしか書けない小説、いやビートたけしという人そのものの様な小説と言っていいかも知れません。

でも、映画「首」を観たら、また違うたけしさんが居て困惑したのでした。「首」の感想はまた近いうちに。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

ビートたけし著「アナログ」の感想