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　うしずのです。

　さて、私の自作の小説の「ノスタルジア　夏の情景」連載再開後2回目ですね。隔週にしたけど２週間てあっと言う間に過ぎますね。

　連載中断の期間が長かったので、登場人物と作中の専門用語の説明書いておきます。

登場人物

信一・・・この作品の主人公。中学一年生。

武・・・信一の親友。

作品の中の専門用語

おがんば様・・・祭りの中心物。龍神輿を案内する係り。

龍神輿・・・龍の姿を模した特殊な神輿。オカシラ、前胴、後胴、尾が乗った４つの神輿とそれを繋ぐ胴からなる。

オカシラ担ぎ・・・龍神輿の担ぎ手で最も重要な龍の頭部が乗った部分（オカシラ）を担ぐ事を任されている人達。最も屈強な男達が選ばれる。

お証し台・・・川を綺麗にしている事を、川の神の化身である龍に伝えるための施設。

前回までのあらすじ

　龍棲神社から、おがんば様と龍神輿が町へと出発しました。それを追って見物客達が神社の出入り口へと殺到し、神社の境内は混乱状態に陥ります。

　混乱の中、尻もちをついた葉月を信一は助け起こします。お証し台の前で落ち合う約束をして二人は分かれました。

　時代設定は昭和５０年代です。

　今回のサブタイトルは「女」と書いて「ひと」と読みます。昭和歌謡っぽいでしょ。

ノスタルジア　夏の情景　２５　路地裏に佇む女

　龍棲神社を出たおがんば様と龍神輿は大して遠くには行っていなかった。信一は走ってすぐに追いついて何枚か写真を撮った。

　そしてまた走り出すと、神輿が通らない裏道に入った。近道を通ってお証し台の所で龍神輿が来るのを待ち構えるつもりだった。

　路地裏の道は木造平屋建ての家が建ち並ぶ中を通っていた。地面は舗装されていないので走りにくかった。蝉時雨が降り注ぐ中、信一は小石を蹴散らし進んで行った。

　しばらく進むと、道の上に白いチョークで歪な丸がいくつか描かれていて、そこで浴衣姿の小さい女の子達が３人けんけんぱをして遊んでいた。

　走ってくる信一を見て、女の子の中の一人が言った。

「あ、おがんば様の家の人だ」

　女の子達は遊ぶのを止め、道の端に避けた。

「もう少ししたら、おがんば様と龍神輿が来るぞ」

　信一が言うと、女の子達は「わーい」「おがんば様が来る」「龍神様が来る」と口々に言い、龍神輿が通る大通りの方へ走って行った。

　小さな女の子達が去った路地の少し先に、女性が一人立っていた。それを見た信一は足を止めた。

　その人は黒地に花柄のワンピースを着て赤いハイヒールを履いていた。パーマのかかった長い黒髪が夏の午後の風になびくと、白く細い横顔がのぞいた。祭りでにぎわっているであろう大通りの方を見ていた。その表情は微笑んでいるのに淋し気に見えた。

　信一はその女性の方へ、少し遠慮がちに歩いて行った。声をかけづらい様な空気を彼女が纏っていたからだ。

　気配を感じたのか女性がこちらを向いた。彼女は近づいてくるのが信一だと気付くと、表情を変え、曇りの無い笑顔を見せた。

「あら、信一君」

　路地裏に佇んでいた黒いワンピース姿の女は、武の母親の友美だった。

「こんにちは」

　信一はぺこりと坊主頭を下げた。

「信一君のおばあさんが今年のおがんば様なんですってね。おめでとうございます」

「ありがとうございます。でも葉月んち、ばあちゃんが腰を痛めて、代役なんで、おこぼれみたいなもんです」

「おこぼれだなんて。龍神様が選んだんだから、名誉に思わなくちゃ」

「そうですね。ありがとうございます」

「それにお父さん、今年もオカシラ担ぎですって」

「オカシラって言っても末尾ですし・・・」

「ご謙遜。ご謙遜。一度もオカシラ担げずに終わる担ぎ手もいるんだから。それを何年も連続だもん。凄いわよ」

「ありがとうございます」

　その時、ジジジッと苦しそうな声を上げて蝉が一匹、二人の頭上を蛇行しながら飛んで行った。短い沈黙が二人の間に流れた。友美は視線を落とし、でもどこも見ていない様な目をして、ポツリと言った。

「いいわね。祭り。・・・・・・私、大好きだったの」

大好きだったと言ったのが信一にはひっかかった。今は好きでは無いのだろうか？と。

　つづく

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ノスタルジア 夏の情景 ２５ 路地裏に佇む女

ノスタルジア　夏の情景　２５　路地裏に佇む女