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うしずのです。
すみません。日曜更新の予定が少し遅れました。
あと、前回の26ですが記事の作りがちょっと不親切だったかも知れません。ごめんなさい。
前回のあらすじ
3年前のある日、武の父は失踪してしまいました。事件の少ない町で、その事は大変な噂になり、武の母は後ろ指さされ、武はいじめられました。しかし、その事がきっかけとなり信一と武は仲良くなったのでした。
武の母、友美は疎外感を拭えない様で「私みたいな、はみ出し者には祭りに居場所が無い」と言って去るのでした。
登場人物
信一・・・この物語の主人公。中学一年生。
信一の母・・・フルネームは天乃美佐子。お茶目。
作品の中の専門用語
お証し台・・・川を綺麗にしている事を、川の神の化身である龍に伝えるための台。
昭和50年代の架空の町が舞台です。
ノスタルジア 夏の情景 27 母へお願い
「私みたいな、はみ出し者には祭りでの居場所は無いのよ」
そう言って、歩み去る友美の後ろ姿を、信一はなんとも言えない気持ちで見送った。何もしてあげられない自分が苛立たしくもあった。
少しの間、立ち尽くしていた信一だったが、はっと我に帰ったように顔を上げ、大通りの方に走り出した。
信一が向かったのはお証し台の近くに張られたテントだった。そのテントは祭りの実行委員が用意したもので、中には折りたたみ式のテーブルとパイプ椅子がいくつも並べられ、学校関係者や町会議員、近隣の町の自治会役員らの来賓でにぎわっていた。
婦人会の会員達が料理や飲み物を出して来賓達をもてなしていて、その中に信一の母もいた。母は町の小学校に今年度赴任してきた若い男性教師に料理を出していた。
「先生、こちら山菜炊き込みご飯のおにぎりです。祭りの日に出すウチの名物料理なんですよ」
「あ、ありがとうございます。こちらの名物なんですね」
「ええ。祭りの期間は、川の生き物を殺生する事を禁ずるという決まりがありまして、だから山でとれた物を使った料理しか作れないんです。おにぎりにしているのは山の形に似せて、神様にこれは山の物ですよ。と示すためとも言われています」
「へえ。面白い習わしですね。いただきます」
そう言って、若い男性教師はおにぎりにかぶりつくと笑顔を浮かべた。
「美味しいです」
「お口に合って良かったです。じきに神輿もこちらに来ますので、楽しんで行って下さいね」
信一の母は一礼するとその場を離れた。
「母さん」
信一は母の手が空いたのを見計らって声をかけた。母さんと呼びかけるのは久しぶりだった。
「おお。どうした?」
母はちょっと驚いた顔をして、信一のいるテントの端の方に来た。
「・・・・忙しい所、悪いんだけど。お願いがあって・・・・」
母は信一の話を聞くと「アンタ何かって何よ。いい加減なお願いね」と、文句を言ったがすぐに微笑みを浮かべると「OK何か考えとくわ」と言ってくれた。
つづく
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