梶谷は、小西に自分が極道に入った  いきさつを全て話して聞かせた。
「三十八という事は俺の兄貴と同年齢だな。道理で雰囲気が似てると思ったぜ、それで
あんたの親父さんは今でも元気なのか?」
「ワシか二十五歳の時にワシの事を最後の最後まで気にしながら、死んだけん  そやけんワシは親父に何ひとつ親孝行らしい事は、してやれんかったけん、それだけが心残りでのう、せめてワシに今、出来る事があるとすれば、それは一日一日を精一杯生きる事だけじゃと思っとったが、この渡世に厄介になって危ない仕事をするようになってから、妙に
真面目に精一杯生きる事が、馬鹿らしくなってしもうたけん。けんど刑事さんよ、ワシはたった今から心を入れ替えて真っ当な人生を生きる事にしたけん。」
  どうやら梶谷は、小西に出会った事に大変、感動し、心を動かす気になったようだ。
「あんたは、さっき親父さんに甘えていたと言っていたが俺なんかにしてみれば、本当に羨ましい限りだぜ、だって俺には、いくら甘えたくっても親父は、いなかったんだから
兄貴は、どうか知らんが俺に限って言えば、親父の顔も満足に覚えていないし、刑事という職業を選んだのも男臭い職場なら、いつか親父のような人に会えると思ったんだ。まぁ峰さんのような人に会えて俺は本当に良かったと思うぜ。」
「刑事さんよ、あんた随分その峰さんとか言う人を信頼している様じゃが、人はそんなに甘いもんやないけん。気を付けたほうがいいのう。」
  梶谷は、今まで自分が対人関係で苦労しているだけに若い小西には、そんな経験をさ
たくなかったから忠告したが、小西の方は峰元を尊敬しているから。そんな忠告を聞く
筈はないのである。やがて、そんな二人の前に羽田が一人の老人を連れて再び現れた。
「兄貴、親分をお連れしたけん。今の話を親分にじっくり聞いて貰うけんね。」
 

 

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 来年もどうか宜しくお願い致します。2025年12月30日 遠田俊雄