翌朝。ホテルは朝食が付いている。パン各種、オムレツ、ハム、ソーセージ、

チーズ、ヨーグルト、ドリンク各種が並んでいて食べ放題である。充実した朝食を

済ませてチェックアウト。

 

 今日は一日かけてローマ観光、その後夜行列車でベネチアに向かう予定である。

駅構内に荷物預り所があるのは昨日確認しているが、料金が高めでなおかつ混雑

していた。その為ホテルで荷物を預かってもらった。その方が手軽だし料金も

チップ程度で済む。駅に近いホテルはこういう時便利である。

 

 ローマに来たら外せない場所として、最初にフォロロマーノとコロッセオに

向かう。地下鉄に乗り、コロッセオで下車。

 この2か所は券が共通なので比較的空いていそうなフォロロマーノに先に行き、

開場と同時に入場した。

 

 フォロロマーノは古代ローマの政治の中心地の遺跡で、内部でパラティーノの

丘とつながっており一度に見学できる。

 

 

 

 広大な遺跡なのでひと通り回るのに結構かかった。後の予定があるので程々で

切り上げてコロッセオに行く。コロッセオの券売所の混雑はは予想通りだったが、

私は共通券を片手に直接入場口に向かう事が出来た。

 

 コロッセオを知らない人はいないと思うが一応説明すると、円形の闘技場内では

剣闘士同士、あるいは猛獣との殺し合いが見世物として行われていた。命がけの

決闘を娯楽として楽しんでいたようで、現代人には想像できない事である。現在は

床が無くなり地下の構造が見下ろせるが、ここに猛獣の檻などがあったらしい。

 

 

 

 コロッセオを出てテルミニに戻った。バスに乗り継いでパンテオンに向かう。

 地下鉄とトラムと路線バスは切符が共通で相互に乗り換えが出来る。例えば、

有効時間内であれば地下鉄で使った切符でそのままバスに乗り継ぎが出来る。

切符の種類は1回券・1日券などで区間は定まっておらず、利用開始の刻印から

一定時間内有効になる。ヨーロッパではよくあるシステムの様である。

 

 パンテオンは古代ローマの神殿として建てられたが現在はキリスト教の寺院と

なっていて、ラファエロ(イタリアの画家)などの墓がある。入場無料だった。

中に入ると、大勢の観光客らが佇んだり座ったりしていた。教会風の椅子が

並んでいる。長時間歩き疲れたので私も座って休憩した。

 天井のクーポラを見上げると中央に丸い穴が開いていて、そこから差し込んだ

日差しが内部を幻想的に演出しているのが印象的である。

 

 

 

 パンテオンから少し歩いてナボーナ広場に行く。建物に囲まれた長方形の

広場で、見事な噴水がいくつかある。噴水の横のベンチに座って一休み。ここは

観光客だらけではなく、地元風の人が寛いでいた。私の座っている脇でも幼稚園

位の女児が2人はしゃいで走り回り、それを母親が見守っていた。現地の日常が

垣間見えて微笑ましく、ホッとする。

 

 

 そろそろ暗くなってきた。少し早いが、ナボーナ広場の近くの路地裏に見かけた

ピッツェリアに入り夕食。ピザ1枚とドリンクで15ユーロ弱(秩父別)。

 10ユーロ札2枚で支払った。するとお釣りが5ユーロ札ではなく2ユーロ1枚、

1ユーロ3枚、1ユーロ以下の細かいのが何枚か返ってきた。これは5ユーロ札を

切らしている訳では無くチップを払いやすい為だろう。チップは幾ら?と試されて

いるとも言える。私は2ユーロ1枚をトレーに残し、残りをポケットに入れた。

 チップは日本には無い習慣なので煩わしい気がする。とはいえ金額は客に委ね

られていて、満足度合いに応じて自分で決めるというのは理にかなっているとも

思う。ところがアメリカだと20%程のチップが一方的に加算されていたりする

らしい。そういうやり方だと少々面白くない。

 

 テルミニ駅に戻り夜行列車が入線するのを待つ。ホームで発着する列車を

眺めていたら、古そうな電気機関車がやって来た。連接構造の車体に台車が3つ

付いている。車体の表記から推測すると多分E656形だと思われる。乗車するのは

この列車とは別である。

 

 

 入線してきた列車に乗り込む。座席車だが、進行左側に通路があってその右に

3人ずつが向かい合わせの6人部屋が並ぶ。ヨーロッパらしい造りである。

私の席は進行方向向きの通路側だった。景色が見にくいが、トイレに立つには

都合が良い。22時35分。定刻に発車した。客車列車だが日本のブルートレインと

異なり、音もなくすうっと動き出す。引き出しが滑らかである。これは偶々では

なく、発車の度にそうだった。連結器の構造が違うのだろう。

 

 6人部屋に6人入り満席なので少々窮屈である。明日は早朝ベネチアに着くので

早めに寝なければ。目を閉じて暫くしたらいつの間にか室内が暗くなっていた。

廊下側は明るいので真っ暗ではない。日本の様に乗務員の操作で減灯したのかと

思ったが、通路に顔を出してみると明かりが点いている部屋と消えている部屋が

あった。どうやら部屋ごとに操作できる様である。辺りを見回すと入口の上に

スイッチがあった。目を閉じている間に同室の誰かが消したのだろう。暗い方が

眠りやすいのは確かである。