翌朝。深夜の大雨は上がって雲間から薄日が差している。宿を出てからバスに

乗るまでの間白浜海岸をぶらついた。3月の事でほとんど人がいないが、夏には

大勢の客でにぎわうのだろう、人気の海水浴場である。

 

 

 バスで下田駅に戻り、爪木崎行に乗り継ぐ。待ち時間に昨日と同じスーパーに

行き、飲み物や食べ物を補充しておく。爪木崎行のバスには観光客風の乗客が

程々に乗っている。一人旅の外国人も。昨日は悪天候だったので、人々が一斉に

動き出した感じがする。

 

 終点爪木崎に着くと、本数が少ないので帰りのバスの時刻を確認しておく様に

案内している。昨日利用した田牛方面と同様、こちらも1日3本しか無い。私は

帰りのバスを1本ずらしてゆっくり散策するつもりである。

 

 遊歩道を歩くうちに、面白い形状の岩が現れる。縦に多くの割れ目が入っていて

まるで鉛筆か割り箸を沢山握りしめた様に見える。これは柱状節理と言って、

海底火山から流れ出た溶岩が冷えて固まる時にこういう形になるらしい。それが

隆起して地上に現れた訳である。ここはジオサイトに登録されている。

アニメ「ゆるキャン△」にも登場した。

 

 崖の下の海岸まで降りられる階段がある。幅が狭く手摺も無い簡素な造りの

階段である。ちょうど若者グループがふざけ合いながら降りて行った。

私も降りてみたいが高所恐怖症であり、風も強いのでとても無理である。

遊歩道の手摺から少し身を乗り出して柱状節理の写真を撮るだけでも少々足が

竦んだ。

 

 

 遊歩道を先に進んで爪木崎灯台に到着。天気が回復したので観光客が多い。

ここは、ゆるキャン△作中で組体操の扇のポーズで記念撮影をしていた場所である。

人が入らない写真が撮りたいので、遊歩道に佇み海を眺めてしばらく待った。

数十分程してようやく誰もいなくなり、撮影出来た。しばらく誰も来なかったので

志摩リンと同じように灯台入口の階段に座って一休み。

 

 

 バス停に戻る途中の風景。水仙の名所だが今は時期外れである。左側、海上に

うっすらと利島が見える。

 

 

 バスで下田駅に戻った。14時42分発の列車がリゾート21の運行なので、

それに乗って帰路に就く予定である。それまで2時間程あるので周辺をぶらつく。

 

 所々になまこ壁の古い建物がある。了仙寺に突き当たり、左に折れて、

小川に沿って歩く。ペリーロードと名付けられている通りで、風情がある。

旧澤村邸が無料で公開されているというので行ってみた。ところが入口に

マスク着用・手指の消毒・検温が必要との表示がある。奥を覗くと係員が

待ち構えているのが見える。マスクは個人の判断になって10日以上経つのに

未だに旧態依然の対策を続けている様だ。私は入場する気が失せてその場を

離れた。

 

 リゾート21は伊豆急行の看板車両で、最前部と最後部に映画館の様な階段状の

展望席がある。是非ともここに乗りたいので30分程前から列車別改札の入口に

一番乗りで並んだ。

 

 

 無事に展望席を確保出来た。熱海までは1時間30分程かかる。

発車するのを待って、乗車前に買っておいたさんまの棒寿司と缶ビールを取り出し、

前面展望を眺めながらちょっといい気分である。

 

 

 

 熱海に到着した。

 

 リゾート21も登場から年月が経過して随分少なくなった。今日にしてもこの

1編成が数往復するだけの運用である。車齢を考えればあまり先が長いとは

思えないし、数年以内に私が再び伊豆急行線方面に旅する事も無いだろうから、

これが最後と思って折り返すのを見送った。

 

 伊豆急行線の運賃はとても高い。それでもリゾート21の様ないい車両を使って

いるから納得できた。しかし今後はどうなるのだろう。リゾート21が引退して

元東急8000系と、千葉のお古の209系ばかりになったら魅力が無くなってしまう。

ぜひ魅力的な新形車両を導入してほしいものである。

 あともう一点。これほど観光客が多い路線にもかかわらずフリー切符がほとんど

無く、普通乗車券も途中下車できない。例えば、城ヶ崎海岸・熱川・河津辺りに

立ち寄って下田に泊まる場合、その都度切符を買い直すしか無いので不便である。

何とか改善してほしいものだと思う。