間接キスは直接キスほど直接的ではない

懐中温泉です。

間接キスは、日本の貴重な資産です。

日本人であるあなたは、
もちろん間接キスを知っています。

が、その間接キスがあなたの資産
であることまでは、思い至らなかったかも
しれませんね。

言うまでもなく、間接キスは
直接キスほど直接的ではありません。

映画『ローマの休日』の主人公である
ローマの滞在新聞記者に扮した
名優グレゴリー・ペックも言っています。

間接は直接ほど直接的ではない、と。

したがって、親日家でもあった彼が
もしも生きているとすると、

間接キスは直接キスほど直接的では
ないことに躊躇なく同意するでしょう。

あるいは、
直接キスは間接キスほど間接的ではない、
ことも指摘するかもしれません。

なるほど、

日本とは間接の国です。

海を隔てた島国だからでしょうか。

すべてが間接的です。

日本の誇るべき芸術であり、
世界的にもよく知られた能は、

まさに「間（ま）」の美学であります。

室町時代に生存し能を確立した世阿弥が
著したとされる、『花伝書』でも、
この「間」を奥義としています。

すなわち、間接キスの起源は古く室町時代に

求められるのです。

俳優として、能を見たグレゴリー・ベックは

間接キスの幽玄さに日本の本質を見たことでしょう。

さて、ここまで、
あなたが間接キスを知っているばかりでなく

実際に行ったこともある、
という前提できました。

しかし、あなたは例によって、

知ってはいても実際に行動に移したことが

ないかもしれません。

もちろん、
能を知らなくても生活できるのと同じように
間接キスをしなくても生きていけます。

そう、

あなたは毎日懸命に生きている。

生きて、生きて、生きて。

･･･やがて、枯れますね。

枯れたら、もう花は咲かないと

思っていませんか？

しかし、
あなたは花を咲かせたい。

生きているから。

枯れるために生きている、
のではないですよね。

そうです。あなたは、

それがどんな花であっても、

あなただけの花を咲かせるために

生きているのです。

世阿弥の境地は、

老いても、その老木に花が咲く

ことでした。

能を通じて、私たちは生きている限り

花を咲かせることができます。

とは言え、能を学ぶことはなかなか

大変です。

そこで、間接キスなのです。

間接キスの起源は能であり、

日本だけがもつすぐれた芸術です。

「間」を最大限重んじる。

「わざ」と「わざ」の何もしないでいる「間」を

心でつなぐ。

人間関係を極限まで象徴的に表すこの行為。

コミュニケーションの極地と
言っても良いでしょう。

間接キスの起源は能であり、

日本だけがもつすぐれた芸術です。

最近は世間の目がきびしく、
喫煙者はますます肩身が

狭くなっています。

ニコチン中毒である。

これが本質でしょうが、彼らの言い分として

この「間」をとるのに煙草は都合がいい、

というのがあります。

確かに、チューインガムやミンティアでは、

間がとりにくいです。

あなたが喫煙者で、やめようと思っている。

あるいはやめて、吸わないこと自体には慣れたが

間がとれないときに、
ふと煙草があったらなあ、と思う。

その場合、ここで掲げる間接キスを

導入することで、十分に「間」がとれます。

ここで、はっと気がついたのです。

あのとき川島なお美さんは、
鏡の自分にキスをする、という
極めて恥ずかしい行為を篠山紀信氏の
カメラの前でしてみせた。

本来人前では行うべきでない行為です。

だのに、どうしてだろう、と
私は考え続けてきました。

彼女は、

我が身を呈してまでも、
私たちに間接キスの重要性を伝えたのでは
なかったか、ということです。

鏡の自分にキスをすることで
究極の間接キスを示したのです。

日本人なら誰でも知っている。

誰でも知っているということは

常識、ということです。

ところが、この常識はあくまで

日本の常識であって

世界的には間接キスを常識とする国は

他にはありません。

したがって、通用するのは
日本国内だけなのです。

もしも誰かの飲みさしをあなたが
飲んだとしても、それは不衛生と
いうものです。

一歩踏み込んで1つの器で同じ飲み物を
交互に飲んだ。

これもせいぜい唾液を交換した、
というだけのことにすぎないのです。

いや、変態ですよね。

また、日本国内であっても
間接キスを、いきなり、直接
というのは避けるべきです。

とくにあなたがアラフォー・アラフィフの
新進気鋭の「そこらのおっさん」であるならば。

若い女性にとっては、そうした存在と
間接キスをするというのは、
最もいやがるものです。

相手によっては強姦罪で訴える、
という場合もありえます。

間接キスの場合、
その表し方も
間接的であるべきなのです。

したがって、間接キスは

以下のようにすると、抵抗なく、
日本の伝統芸として、

日常の中での「間」を創造することになります。

１　間接とは直接ほど直接的でないことを味わう。

２　間接キスは、能の発展として室町時代に起源を

遡れる日本独自のものであることを認識する。

３　鏡にキスをする女性も間接キスの一種である、と理解する。

４　もしも誰かがあなたの飲みさしの
　　飲み物を飲んだとしても

　　それは間接キスなのだ、と
　　優しく解釈するようにする。

５　その間接キスを自分にしてくれた人
　　に感謝する。

最初は、いささかぎこちなく感じるかもしれません。

が、間接キスをすでに知っているあなたにとって、

慣れるのはごく自然で簡単だと思います。

それでは今日から生活の中に
間接キスを取り入れ、

間のある時間・空間を味わいましょう。

懐中温泉