8月19日木曜日。
遥か長い道のりを経て、
東京は墨田区の錦糸町のその駅に隣接されたビル、
PARCOの2階にあるスタバに、一人やってきた。
その道のりは予想外に楽チンだったが、
私のお尻から根っこが生えてきたような気がした。
とりあえず3月19日にオープンしたこのスタバ。
その事にも縁を感じて仕舞った、
3月19日産まれの私は、
一杯319円のショートサイズの珈琲を、
ここでは必ずオーダーする。
トリプルでサイクー(319→最高!)
奇跡のハットトリック達成だ。
サインコサインタンジェント!
そしてゴール、ゴール、又してもゴール!
夕方のニュースでそのゴールシーンだけがクローズアップされ、まさかのトップ記事となり、
流出されて仕舞いそう。
とりあえず他人事ではなく、
一人無駄に狂喜乱舞している訳だけれど、
珈琲を飲み始める前はいつも写真を撮る。
知る者ぞ知る私の行為。
パシャリは鳴らない。
鳴らない変わりと言ったらなんだけど、
私の目の前に、今、珈琲男がいる。
初めて見えて来た時から一度たりとも、
私と面と向かいあった事はない。
一瞬うろたえ、
しかし、本当にいつも胡散臭さく、
いつも白々しいから今すぐ消えてくれ!と心の中で叫びながらも、
やっぱり、気にしないふりをしたが、
私はやっぱり、知る者が、好きと、話を戻し、
珈琲という名の毒を自ら受け入れる事にしてみた。
やっぱりパシャリは鳴らないか。
私は今、
目の前に拡がる空をこうして今も眺めている。
そんな空を眺めながら、
オープン日の3月19日に、
このスタバに初めてやって来た時の空が、
暗雲垂れ込めた曇り空だった事を思い出している。
しかし今日は違う。
今日は空が明るく暑苦しい位蒸してもいる。
蝉の鳴き声だって聞こえてきそうだ。
夏だからそうだ。夏だから当たり前だ。
色鮮やかなスカイブルーの空に、
真綿のような真っ白な雲を、
私は目を細めながらちょっと加工してみる。
スマートフォンを操作しながらも、
私の肉体はしょっちゅう綿のようになられ、
しょっちゅう空に召されている時がある事を思いだし、
そんなときはそのように仕上げてくれた私を知る、
好きな者達の顔がやっぱり浮かばれてくる。
ありがとうと思った、あっちでもこっちでもそっちでもちゃんと向き合ってくれて。。
しかし、ラッキーは続いたな。
来た時、席は満席で、
そのまま隣の楽天地ビルへ移動をしようとしたが、
なんと奇跡的にひと席あいた。
しかも私が好きな一番隅っこ。
私は夢中で走り、そして荷物を置いた。
しかし、もう時間だ。
その後。
(僕は今錦糸町のスタバにいる。
いつからそんな噂が流れ、
何処から何処までどう伝わったのか知らないが、
珈琲を目の前にした瞬間、
珈琲の写真を撮る、
ある意味変な趣味をお持ちの女がいると言う噂がちまたで広がり、
僕は今日、それをこの目で見てやろうとこのスタバへやってきた。
ちまたや世間と言うのは猫の額程の大きささ。
それは一言、一枚の写真と言っても間違いでない。
とりあえず僕の目と脳ミソは、
自分で言うのも何だけれど優秀だと思っている。
兎に角、写真を撮る。
パシャリと言う僕みたいな男らしい音と共に、
女の子のような身体の小さなスマートフォンに、
それが一瞬でメモリされる。
その行為事態別に可笑しくはないし、
普通に考えてもやっぱり普通だと思うけれど、
噂が広まる位だから、
世間様の関心は、写真を撮ると言う行為より、
きっとその女に向いているのだろう、
きっと普通ではないんだと私は思った。
何か匂う。同じような匂いが。
だって僕のご自慢の鼻も、ピクピク動くんだから。
しかし僕とその女に縁はない。
何かしらの理由を考え、
きっかけを掴んでいかないと、一言、僕は宝の持ち腐れだ。
やっぱりそうだよな。
やっぱりそうだよな。
いくら考えてもやっぱりそうだよな。
したらそれがやっぱり答えになる。
本当はやっぱりなんて言葉を、、
本当はやっぱりなんて言葉だけはどうしても使いたくなかった。
何故ならば、それは僕自身の問題。
それ以上は恥ずかしくて、情けなくて言えたものじゃない。
しかし、そんな僕もちょっと大人になれたって事かな。
とりあえず、
普通にばりばりやってきて、
これまでずっと、やっぱり頑張り、生き抜いてきたつもりだ、、、。
だけど気がついたらこんな年だし、親も年だし、
だけ~ど~~~~と言いながら、
身体を左右に揺らしながら全力で万歳し、
ら~ら~なんて叫ぶような真似もできない。
そんな僕が今更、
やっぱりそうだよなみたいな事がうまく出来るだろうか?
あっち向いて、こっち向いて、液晶画面ばっか見て、誰よりも頑張ってやってきた僕が、、、
しかし、写真を撮る女なんて、ごまんといる。
あっちでもこっちでそっちでも、、、、
しかし、撮り終えた直後は皆が少し頬を赤らめる)
完
(書く女シリーズ)
(珈琲男シリーズ)