8月7日土曜日。
日付を見たとき、今日ははなの日かぁと思ったが、
顔の真ん中にある鼻しか想い浮かばなかった。
しかも自分ではない誰かの筋が通った綺麗な鼻。
今でもちゃんと思い出せる。
最近はマスクブームだからきっとその以前の記憶になる。
不思議な事だと想いながらも、今どうすることも出来ず、
仕方がないから自分の意識を自分の鼻に向けようとしたが、何故か思い出せなかった自分の鼻が。
とりあえず鏡を手にとりその自分の鼻を確認し
たら、一瞬の快楽を得られ、俺様になれることも解っているつもりでいたが、
そんな気にはなれなかった。
ある別の意味で、一言情けないからだろう。
とりあえずその次の瞬間には、
涙の数だけ強くなろうよ。
風に揺られている花のように。
自分をそのまま信じていてね、
明日は来るよ、君~のた~めに~と、
岡本真夜さんの名曲TOMORRWのフレーズが、
何処其処吹く風のようにいきなり頭をよぎる。
風の頼りか?良い知らせか!ギョッ!と思ったが、完全に気のせいだ。
部屋の窓は全て締め切っているはずだから。
それに涙を流した事なんてほんの数回。
角膜上皮障害とドライアイ、コンタクトレンズつけっぱなしで起きた朝。
とりあえず明日は来るよ、どんな時も君の為に、、、。
そうだね、明日は来るね、君の為にね、
と、消えかけた情熱が再び燃え上がるような、
烈々しい感情の揺れとかまるでない場所で、
私は、何夢みてんだよ、理想論語ってんじゃね~よと心の中でちゃんと毒づきながら、
いつもの事、珈琲を飲む準備に取り掛かった。
マグカップの中に珈琲を注ぎ入れている間中、
手先が震えてどうしようもなかったが、
私は今日も自分の感情を圧し殺し、
しかし、
すすり泣く声と共にありがとう、
でも自分が不憫でならない、でもありがとう、
僕も君に愛を注ぎたかったと聞こえていた。
声の主は多分マグカップ。その名も藤間・愚作(とうまぐさく。性別男。私より年上)
僕も君に愛を注ぎたかった?はい?過去形?
私はちゃんと注いできた!この手でちゃんとね!
年配者や年上を敬い話を聞く事は当たり前でしょ。
それにあなたも見てたよね。そこにいたよね。
この家に来てどれくらい経ったのか忘れて仕舞ったけれど、
お互い歳だけは重ねた。今更おっせんだよ!と、
又一人ぼっち心の中で吠えてしまう。
そして後からいつも一人苦水を飲む羽目になる。
破滅の刃が自分に切り落とされるのだった。
とりあえず黒歴史に幕をおろし、
そんな気持ちを経ちきろうと思い付き、
皆がやってる、そんなに好きでもない写真を撮ってみる事にした。
パシャリがひなげし!と聞こえる。
思いがけない事で驚いたが、
その次の瞬間には、歌の妖精、アグネス・チャンさんのひなげしの花が流れ始める。
最後は愛の涙は溢れそうよ。だった。
それはダメ!私は咄嗟に叫んでいた。
最後は、完だから。
完
(書く女シリーズ)
(珈琲女シリーズ)
(フチ子シリーズ)
(マグカップシリーズ)