窓の外はまだ薄暗く、
霞みがかった空の何処かに冬の帝王が身を潜めている気がした。
冬の帝王って何!?
私は心の中で一人突っ込みをした。
そして直ぐに一人ボケ役に回った。
えっ!姉さん、冬の帝王に会った事あらへんの?
ホンマ?それあかんな。可哀想やな。
良いお医者さん、紹介しよ~な。
それとも何や?
何か重罪でも犯して長年ぶちこまれてたりでもしたんか?
なら特別に教えたるわ。
空には冬の帝王、秋の帝王、夏の帝王、春の帝王ってのがおって、
春、夏、秋、冬とそれぞれに王様がいるんや。
今の季節だと冬の王様になる。
そして冬の王様は、他の王様と違って、
何故か何も身に付けていないらしい。
そしていつ、どのタイミングで遭遇出来るのかも予測が出来ん。
ただ一度でも冬の帝王に遇った事がある人は、
口を揃えて同じ事を言うらしいんや。
何故裸?って。
したら帝王は笑いながらこう言うらしい。
冬が寒いからに決まってるやないの!それが自然やないの!って。
私は笑いたかった。
そして春が来ないかなぁ~と心からそう思った。
とりあえず、
さっきよりし~んと静まりかえった気がした部屋の中で、
いつものように珈琲の写メを撮った
立ち上がる湯気をみていたらその中に大事な人が見えた気がした。
よし!とりあえず私の一日が今日も始まる!イェーイ(・∀・)。とは一人呟きはしないけれど。
私の一日は、
飲む、聞こえる、そしてそれ(幻聴)を記録すると言う事が殆どだ。
だから誰かとお喋りして笑いあい、
誰かの声に耳を傾け心寄り添うって事が殆どない。
悲しいかな。我が人生本当に孤独だなと想いながらも、
頭の片隅では気楽だなとかも想っている。
そして今は、
さっき聞こえた珈琲女の声を記録しながら、
目の前の珈琲をのんでいる。
珈琲は美味しかった。そして熱々だった。
うん。珈琲女が言っていた事は良く理解が出来た。
不思議と、解りすぎるくらいだった。
しかし、そこで諦めたり開き直ったりして、
これまで通り何も変わらず生きて長らえて仕舞ってもよいのだろうか?と思った。
決められた価値観の中に自分を押し込み、
諦めていく事を美徳に替え、
一体何が、今この瞬間から私の夢は愛に変わったのだイェーイ❗とか言えるのだろうか?
解らない。
珈琲女がさっき言っていた事は頭では理解が出来た。
しかし心から納得し、解ったかと言うとそうではない。
やっぱり私には愛が解らないのだろうか?
だからいつも考える。そして考えている間に、来たものが遠ざかってゆく。
愛に形はない。それは空も同じ。
でも私は形あるものが見たいし欲しいし触れたい。
もし冬の帝王が本当にいるのであれば、
この目で実際に見てみたいと思った。
したら愛でる(芽でる)何かがあるのかもしれない。
その為には先ずを朝ごはんを食べ、
光を浴びなければなければならない。
しかし外は寒い。
完。