『女の朝パート434』 | ☆らんちゃんブログ☆

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落花流水。今在る事の意味や流れを感じながら、自由に書いていきます☆

9月28日月曜日。今日のお天気とかどうでもいい。
午前11時30分。
吉祥寺のTULLY'S COFFEEに女が現れた。
女は、私の夢は今この瞬間から愛に変わったなどと言う珈琲女の事だ。
見えない姿が他の女と間違える筈がなかった。
私が珈琲を飲む度に現れては、
私の気持ちを燻り煩わせ、仕舞いには私に幻まで見させた女だ。
連絡もなしに突撃晩ごはん的に現れ、
私のパーソナルスペースに土足で踏み込んできた。
危害を加えられた事はこれまで一度足りともなかったが、
ある時から、私は、
同じ女同士、同じ珈琲香を嗅ぐもの同士、
違和感みたいのを感じるようになったのだった。
私は自分の気持ちに正直で生きてきたつもりだ。
それにちゃんと、幻聴と幻覚症状があることもカミングアウトしている。
本当は言いたくはなかった。
しかし生きる為には、頑張った。
それに、
皆と同じ様に少し位夢だって希望だって持ちたいし、憧れだってある、人よりちょっと珈琲と珈琲を飲む時間が好きなだけで、
これと言って特技もなければ、自慢出来る事も自信もない、フツーの女になりたかった。
そんな私が、今日は勇気をだし珈琲女を待ち伏せする事にした。
事細かい計画を立て、何度もイメトレをし、
何度も考えを改めたって言うのは、嘘八百で、
いつも行き当たりばったりで、女の一挙一動を観察しいた。

今日こそ面と向かって言うんだ。
スンマセン。ありがとう。
私は幻から覚めたいのです。
お願いだからもう私の前に現れ、
私の珈琲時間を邪魔しないで欲しいのです。

ここだけの話、
もやもやした私の気持ちは、
ある時から消えて去る事がなく、
いつも悶々とし渦を巻いていた。
珈琲を飲むことで何とか誤魔化し、
やり過ごしてきたが、
これ以上の本当の苦水は呑み込めない。
消化しきれない心のしこりが、
荒れて弱った胃腸の中で、
有言の意を私に唱え、巨大な塊となり鎮座しているようだった。
いっその事、


この苦くて薄暗い液体の中へ珈琲女を押し込み、
私の大好きな珈琲の中でスタミナ切れるその時まで溺れさせようかとまで、無駄な事を考えて仕舞う。

とりあえず、落ち着け私。
いつもの幻覚だから気に病む事ではない。
それに何も考えず自然体でいれれば、
きっと万事休すだと私は一人呟いてみた。
珈琲女に気づかれないよう、とっても小さな声で。

私は珈琲が入ったカップが手元から外れないよう、
震える手を直隠しにしながら、慎重に歩みをすすめた。
珈琲女が私の後をついてくる。
そして私の後ろ姿をじっと見つめている。
珈琲女のせいで、私の血流が又しても更に早まった。
心臓が耳の中にあるのかと思う程、
全身の血管がその鼓動に合わせて波打った。
ドックんドックん。ドックン!
身体の奥深い所から拡がる波紋が、
無音の非常ベルを鳴らす。

落ち着く為に椅子に座り写メを撮ったが、
女は喋らない。微動だもしない。
仕方がないから、私はストローに口を近づけ、
アイスコーヒーを飲んだ。
思った通り、冷たかった。
体温が吸いとられてゆくような感触が、
心にしこりが出来たあの瞬間までの時間を一気に巻き戻す。
今日もダメだった。
私はやっぱり臆病だ。
その一歩がいつも踏み出せない珈琲時間である。


完。



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