『まぁ~何て素晴らしい珈琲なの?!』紫ふち子は言った。
それを聞いた黄ふち子は少し笑った。
『そうでしょ、彼ったら事ある度に私に珈琲を注いでくれるのよ!今日も私の為だけに一生懸命、無駄に手間暇かけながら珈琲を注いでくれた。
しかし、あなたは全然変わらない美しさを保っているわね。その美しさの秘訣、後からたっぷり聞かせて貰うからね。』と黄ふち子。
『それはどうもありがとう。しかし、あなたはこんな素晴らしい贈り物を頂いて本当に幸せ者よね。
羨ましい!!私なんて珈琲を注いでくれる人も、注いであげるような人もいないできたから、誰かに珈琲を注いで貰うなんて夢のような話よ』と紫ふち子は答える。
『さぁ、お二人さん。とりあえず乾杯しましょうよ』
少し遠くにいた赤ふち子が促す。
数秒後。女三人は共に座った。
『では、久しぶりの再開と永遠の友情に乾杯!』
赤ふち子が音頭をとる。
『乾杯!』女達の時間が始まった。
『違うのよ、、、実はあの珈琲は自分で注いだの。贈り物なんて真っ赤な嘘、、』黄ふち子はいきなり暴露する。
紫ふち子と赤ふち子は、
突然のまさかの告白に気まずくなり、しぶしぶ珈琲を飲んだ。
数秒後、不穏な空気を打ち消すかのように赤ふち子が口を開く。
『私は解っていたわ』
赤ふち子は黄ふち子の手を握り、呟いた。
『何故解ったの?いつもと変わらない珈琲なのよ、何故、、、』と黄ふち子。
『それは、、、、』ピンクふち子がどもる。
その時だった。
『何でも良いじゃない。どうだって良いじゃない。
どの道、カップの底はもう時期見えてくる。
今は、美味しい珈琲と楽しいお喋り、そして今日ここに偶々集まった私達の友情が確認出来た訳だから、それで人生すらも十分って気がしない?!』
紫ふち子が知ったような事を言う。
『じゃ、何よ?!
私はその時々で、楽しむ珈琲や、ただの、都合良い女って事なのかしら?珈琲と一緒にされるなんて本当に酷い!ばか!おたんこなす!だからあなたはなすの色みたいな洋服を恥じらいもせず毎日着ているのね、一度くらいは洗濯しなさいよ!これでは珈琲の香りすらも入ってこないじゃない!』と赤ふち子が声を荒らげる。
『ちょっと待って。私のせいで二人が喧嘩する所なんて見たくない。私がまいた種よ。私の自作自演よ。それは謝る。本当にごめんなさい。私はただ見栄を張りたかったし、強がりたかったのかもしれない。だって私は、誰かに珈琲を注いで貰わないとその珈琲さえろくに飲めない女だったのよ。でも、今日初めて自分で珈琲をいれてみて気がついた事があった。珈琲を入れるって案外手間はかかるし、時間もお金も体力も必要で、思ったより大変だった。
訳が解らないから、気が付いた時には、
1人でぶつぶつ呟きながら汗くさもしていた。
おかげで洋服も黄色く、黄ばんじゃったの。
でも、あなた達がここに来てくれると思って頑張って珈琲をいれてみたの。
したら、こんな私でも珈琲をいれられたのよ!
お願いだから、仲良くしましょう。
お願いだから、新型コロナ喧嘩なんてしないで、、、、、、』いつの間にか黄ふち子はすすり泣いていた。
二人は押し黙る。
数秒後。
『今日はこれで終息しましょう。
そしていずれ来るその時までは、
なるべく三密を避け、なるべくstay homeをし、
健康だけは維持しましょう。』
赤ふち子が言った。
完。